「ある子に」カロッサ  藤原定訳


君のお母さんの家に 雪が降っていた、
お母さんは君のことは なんにも知らなかった、
まだなんにも、どんな眼をして君が
お母さんを見あげるのかも。

星の日なかをお母さんはよく 不安そうに歩いたものだ、
まるで君がくるしめ おどかしているように。
それでもかよわい両手を あてていた
君の血行をまもろうとして。

朝の嵐が 雲の中から太陽をとり出すように
お母さんは暗やみの中から 君の運命をとりだしたのだ。
君はまだ この地上におらず
しかもすでにどこにでもいた。


ある子に
ラオスの諺に、
人は風から生まれ風に戻る
というものがあったような。
風を感じたとき、
それは生命の息吹を感じているのと似ているのかも。


2014.7.16