この日が来ると…

その少し前から夢に出て思い出す。


厳しく…強く…優しく…愛情深いばっちゃんの思い出。

ばっちゃんとの繋がりは、亡くなった母さんとミサ姉のおかげ。

最初ばっちゃんは母さんの血縁だと思ってた、それくらい近い存在だった。

実際は神社から徒歩1分の所にある八百屋さんの婆ちゃん。

女学生の時に終戦を迎え、最初の旦那さんは出兵の前日に籍を入れ、そのまま戦死された、実際の婚姻期間は1日って言うか、一晩と言っていい。

旦那さんは幼馴染だったそうだ。

二番目の…って言ったら失礼だな…

ばっちゃんの事を知った時の旦那さんは、再婚した人。

再婚云々の話は、だいぶ後から知った事。

この旦那さんってのが、運命はかくも…って感じで、実は最初の旦那さんの弟さん。

弟さんは結核で、兵役免除になった人。

旦那さんが実の兄弟って、葛藤は無かったんかな?って思ったのだが、最初の旦那さんが「生きて帰れなかったら弟を頼む」そう言われて、出兵前夜は同じ布団で寝たのだが、子作りは「あとで苦しむかもしれない…」そんな旦那さんの意思で無かったそうだ。


歴史からみたら名も無き一兵の話でも、どれほどの葛藤があったのか?

今思いを馳せても苦しくなる…


小学校6年の夏休み、平日からちょいちょい近所の自動車修理業者で手伝いがてらに、バイトしてた。

もちろん世間的にはNGだったが、大人でも根を上げる倉庫の片付けやガス交換とか体力仕事で、ちゃんと大人並みの金銭を与えてくれた。

社長の太一さんにも感謝です。


そんな時にばっちゃんが「太一、あのクルマAXISに与えて、場所と道具使わせてやって」それは右のリアフェンダーからトランクにかけて、ベッコリ凹んだハコスカ46年式の4Dr スカイライン。

触りだしてから、それがC10では無くPGC10…

46年式のスカイライン GT-Rだと知り、子供の俺はただ驚いた。(初めての板金が、ハコスカGT-Rってあり得ない!って感じですが、昭和58年当時ケンメリはともかくハコスカGT-Rはちょいちょい見る車だったんです)

ばっちゃんは板金の基礎を教えてくれた。

ばっちゃんの自慢は零戦の(大戦中の戦闘機は、どれもばっちゃんは零戦と言っていた)エンジンカウルの修正をしてた事、技術はプロが驚く程で、社長の太一さんが教えを乞うのも珍しく無かった。

ばっちゃんは女学生当時に、女子挺身隊って女学生が軍需工場で働く中で、筋が良いと言われ大人の男性に混じり板金をしてたそうだ。


「あたしが白百合挺身隊に居た時…」って言われ、思わず『白百合って…😆』吹き出したら、「AXIS…ちょっと裏においで!」と、後にも先にもこんなに血管の切れそうな顔のばっちゃんを見た事なく、思いっきり頭にゲンコツ貰った💦


山を作ってはいけない…

谷を作ってはいけない…

凹みの中心を意識するのではなく、凹みの方から撫でていって歪むところと角からの中心を意識して、炙って冷やして叩いて…

曲がった鉄は治らない、冷やした鉄は歪む、伸ばして冷やした鉄は縮む…

そんな事を、見るのではなく、触って撫でて考える…

触って歪みを感じて、音で違和感を感じる…

火を使う時は、バケツに水と雑巾を手に届く所に置く。(実際ベビーサンダーの火花からグリス引火とか、大概の対処はバケツで何とかなりました💦)


この車のこの部分が直せたら、どんな車でも直せる。

ばっちゃんは、そう言った。

確かに、サーフラインが叩ければ、大概の事に対処できるわな💦


大事な事は2つ!

意見を求めた時に、「良いんじゃない?」って言われた時は、人の意見では無く、納得するまで自分で繰り返す。

「危ない!」って言われた時は、素直に従い、それはやらない。


「夏休みのオモチャにして良い、やってみな」


太一さんに後から言われました「ばっちゃんはAXISが本当に可愛いんだなぁ…その車はばっちゃんの旦那さんの宝物で、息子の陽一もいまだに触らせてもらえないもんなぁ」


時々様子を見てはアドバイスをくれるばっちゃん。

触り方が悪いから、感じられない…そうよく言われました。

「ミサのおっぱい撫でる様に、優しく外に内に円を書くように撫でる、指先と手の腹の感じ方も違うから、ゆっくり優し〜く…そうそう♪そんなふうに撫でた方が、おっぱいも気持ちいいんやで♪ミサの張りのあるおっぱい触るように…」

そんな話を昼飯呼びに来たミサ姉が『ばっちゃん!』と怒る😆。

「なんだ?AXISに触らせてやったらええやん」とばっちゃん。

「私のは陽一がチューチュー吸い過ぎてシワシワや」

そう言うと『ばっちゃん!』と陽一さんが困る…


あの頃幸せだったなぁ…


そんなばっちゃんの命日は12月8日…

戦争に翻弄されたばっちゃんの命日は、奇しくも大東亜戦争の開戦日…


ばっちゃんの事を思い出すと、いつも苦笑で終わるんだよなぁ…

ばっちゃん…

大好きなばっちゃん…

ありがとう