花冠のない花は目にとまらないので、吾々はそれを花の咲かない木だと思ふ。が、それは間違ひだ。どんな草木にも花は咲くのだ。
『柳や、樫や、白楊や、松や、ぶな 「ぶな」に傍点]や、小麦や、其他のいろんな植物には花がないやうですね。僕見た事がありませんよ。』とジユウルが尋ねました。
『柳や樫やその他の木にも花は咲くのだ。たゞ、花が小さくて花冠が無く、あまりその花が目立たないので、吾々が気づかないだけの事だ。これには例外といふものは無い。どんな植物にも花は咲く。』
5字下げ]五九 果実 「五九 果実」は中見出し]
『あの人はこんなに着て居るとか、あんなに着てゐるとか、云ふだけでは、その人を知つてゐるとは云へない。花は萼と花冠の着物を着てゐると云ふ事が分つたところで、まだ花を知つてゐるとは云へない。此の着物の下に何にがあるのか。
『こんどはにほひあらせいとう 「にほひあらせいとう」に傍点](丁子の一種)の花を調べてみやう。此の花には四枚の萼片で出来た萼と、四枚の黄色い花弁で出来た花冠とがある。此の八つのものを取り捨てゝ了ふ。
