もじもじ… | 夢☆かなえちゃいます。

川上健一著 日めくり物語 小学館より

娘はもじもじするばかりだった

「なんでもいいぞ
ほしいものをあげるぞ
入学祝いだ」

娘はこの4月から小学1年生になる

私は娘が4歳の時から家族と別れて単身赴任中だった

本社での会議のため
前日
久しぶりに我が家で一泊した

午後には飛行機で赴任先に帰る予定だった

「なんだったら2つでもいいぞ
1番ほしいと思っているものと2番目にほしいと思っているものをいってみな」

父親らしいことをしてやれなかった罪滅ぼしだ

娘の望みなら少々値の張るものでも買い与えるつもりだった

「あらよかったわねぇ
お母さんもなにか買ってもらおうかなぁ」

妻が声を弾ませた

「うーんとねぇ。。。」

娘はいいにくそうにもじもじするばかりだった

「いいからいってみな
なんだ?」

「でも
きっと無理だよ。。。」

娘は上目遣いに私を見て言う

「ピアノか?
パソコンか?」

「わぁ、すごい!」

妻が目を丸くして驚いた

「なにがほしいんだ?
いってみな」

「あのねぇ。。。
商店街にいってねぇ。。。
でも無理だよね?」

「いいから、いってみな」

「あのねぇ
ほしいのはねぇ
ピアノとかパソコンじゃなくてねぇ
お父さんにねぇ
手をにぎってほしいんだ

それで商店街とか
公園とか
川のとこの道とか
みんながいるところを
一緒に手をつないで歩いてほしいっていうのなんだけど
でもお仕事が忙しいから
やっぱり無理だよねぇ。。。」

娘は
はにかんで
私をみた

娘と手をつないで歩いた記憶がなかった

はにかんでいる娘が
私の視界の中で
濡れて
歪んだ

妻も私も無言だった

支社長
大切な用事ができました

もう一泊します

明日の朝の会議
午後にしてもらえないでしょうか

はい
朝一番の飛行機で戻ります

そういおうと決めた

私はひとつ息を吸って電話に手をのばした。


いー話だぁ✨




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