以下は渡部昇一著『税高くして国亡ぶ』(ワック文庫)のP.256~P.258より引用
税法は如何に変わっても、つまり法令としての税法(legislation)は如何に変わっても、法則としての税法(law)は変わってはならない。
その税の10則とは次のようなものである。
1.高率の税制の場合、税率と税収は関係なくなる。
2.高率の税金は有能な国民や会社を、また資本を海外に逃亡せしめ、低率の税金は豊かな人や豊かな会社を自国に招き入れる。
3.収入を増やす事にエネルギーを使うよりも、節税(もしくは脱税)に頭を使った方が得であるような社会は衰退する。
4.国民の所得を完全に捕捉しようという考え方自体が悪である。
>>>>封建時代でも名君は「四角い重箱を丸い杓子で掬うようにやれ」と言った。
5.子孫の為に財産を残せない税制を持つ国家は、国家の名に値しない。
>>>>国家は国民の生命と財産を護る事に存在理由を持つ。
例えば今の相続法は、連続強盗や匪賊の掠奪よりも遥かに甚だしい。
子孫の事を考えるのが無駄だという税法は、人間性を損ない、国の文化的伝承の根さえも滅ぼすものである。
6.税率は戦争などの非常時以外は──────従って戦争は極力避けるべきである──────国民の収入の一割であるべきである。
>>>>収入の種類が多い時も、それぞれにつき一割の分離課税でるべきである。
7.脱税は良くないが、それよりも良くないのは税金の不正な支出、あるいは不適切な支出である。
>>>>自分の出すべき税金をちょろまかすのもいけないが、他人の出した税金を浪費するのはもっと悪いという事。
8.税金は国民の自助の精神を鼓舞し、自助的配慮を促すものでなければならない。
>>>>高福祉高負担の政策が耐え切れないものになっている事が証明されて来ている。
例えば入院の際の差額ベッドの部屋に入る為に個人は保険に入る、という国民には自助的活力が生じ、全く万人平等にされれば、国民の多くはやる気を失う。
9.極端な土地の独占を除けば(土地は生産出来ない)、富の再配分を考慮する税制は悪である。
>>>>「富の再配分」は特定のイデオロギーであり、それを権力で実行しようとしたソ連や、中国や、ベトナムや、カンボジアのような国になりたいか否かは、それこそ国民投票で決める必要がある。
10.税務署員の大幅な削減を伴わないような税制改革は、全て悪である。
>>>>ベクトルが逆であると言ってもよい。