契約。

名づけをして、主と下僕(しもべ)として契約を交す。


なんかやっぱり現実味がないけど、この可愛い天使くんに付き合うと決めたからには、それなりに覚悟をきめないと。



「ねぇ、契約って、なんか儀式とかあんの?」


「うん」


「血を飲むとか、なんかそんなのだったらオレ、ヤだよ?」


「そこまで魂を縛るような契約はしねぇ」


「え、魂って……えっ、そういうのもあるってこと?怖ァ!」


「うん、でも、そこまでの契約はオレはまだできない」


「あるんだ……」



非現実的なやり取りが、いよいよもって現実味を帯びてくる。

天使と契約なんかした事ないし、いや、それはそうで、そもそも天使がこんなふうに存在していることも夢みたいだし、でもこれはどうしたって現実だし。


「うわぁ……」


「どうした?」


「いろいろ考え始めたら頭痛い」


ふだん、なんでもどうにかなってきたもんだから、こんなふうに考えることもなく、二日酔いも手伝ってくらくらしてきた。頭を抱えるオレに天使くんが言う。


「なぁ」


「ん、なぁに……」


「契約したら、楽になるぞ」

「ちょっとその言い方、悪い奴が唆してるみたい(笑)」


「俺は天使だから真実しか言わないぞ、唆すなんてするわけないだろ」


「マジレス......ですよね。え、じゃあ、楽になるってなに?頭痛治したりできるの?」


「うん、契約した主なら癒しを与えることができる」


「ナルホド」


「まだ修行中だから、誰にでも与えられるわけじゃねーんだ」


「へぇ、いろいろ事情があるんだねぇ」


と、ぼんやりした頭で天使くんを見れば、予想外に真剣なまなざしにぶつかって、どきっとする。


そして



「俺と、契約して?」


と、眉をハの字に下げて、今にも泣き出しそうな顔で言ったカレ。





この子にこんな顔させたくないなぁって思ったら

「わかった、契約するよ」

って。



オレにはそれが一番自然な答えだった。