今日はそれほど遅くならないで終わりそうなスケジュールだったから、どこかで待ち合わせして食事でもしようと約束をしていた。
明日はやすみだし、久しぶりにゆっくり飲めるね、なんて言ってたから、酒と肴のうまい落ち着いた店をいくつか考えていた。
その矢先。
「しょーちゃん、今日さ、外で飯食うのやめて、オレんちでゆっくりしようよ。直接ウチに来て?」
「・・・え、あ、うん・・・」
「仕事、このあと、しょーちゃんはグラビアだけだよね」
「そうだけど、相葉くんは?」
「ナレ録りと取材。でも長くはかからないから、先に帰って待ってて」
相葉くんから相談ベースではなく、『こうしてほしい』と希望を言われることが滅多にないので、少しの戸惑い。
そして、どうやら俺は・・・この扱いを嬉しがってる、ようだ。
自分の気持ちに戸惑った。
調子が狂う。
「・・・ん、わかった、なんか食いモン買ってく」
「ありがと、ソッコーで帰るから・・・風呂入ったりしてゆっくりしててよ」
俺の頬を片手で包んで、親指で優しく撫ぜる。
そして低く、ささやく。
「先に寝たらダメだからね」
「じゃあ、早く帰って・・・来てよ」
ゆっくり近づく唇を見つめて視線を落とし、そのままそっと目を閉じる。
少し顎を上げて待つのがいつものやりかた。
が、その先が、キスが。
・・・来ない。
不安になって目を開けたら、満足そうにニヤリとした相葉くんが
「そんな顔、ほかで見せないでよ」
と、頬を包んだ手をうなじに滑らせて俺の顔を引き寄せる。
同時に近づく相葉くんの唇。
今度こそと期待、したら。
「・・・ッ!」
相葉くんの唇は俺の耳たぶを食み、ちゅるりと、リップ音を立てた。
驚いて身を引く俺に構わず、相葉くんは俺の腰を引き寄せて
「いまキスなんかしたら火ィついちゃうから、我慢・・・ね」
と、彼の唾液でぬれた耳元へ、ささやく。
かすれそうなほど低い、それでいてひどく甘い声と生暖かい吐息が、俺の耳をくすぐった。