「・・・さき?」


「そう、先」

「さき、ってなに?どこ?」

「概念でいうと、2人の未来、とか、現実的な事でいうと、まぁ、例えば、恋人になったとしたら、恋人らしい触れ合いとか、どんな風に過ごすのかなぁ、みたいな」




そういうことを、まじめにまじめに考えて、勝手にドン詰まってしまったんだろうな。きっと。それはたぶん・・・いや絶対、しょーちゃんのヘタレのせいだけじゃなくて、オレのこともたくさん考えてくれてたんだろうね。


でもね、しょーちゃん。



「恋って、2人でするものだろ?」

「え?」

「なんで、勝手に一人で決着つけました、みたいな顔してんの」

「は?」

「え、でも、は、でもなくて。もしじゃあ、そうだとして、先に進まなきゃいけないのかなって、怖かったり迷ったりしたとして、なんで、それをオレに『先に進まなきゃいけない?』って聞いてみようって思ってくれなかったんだよ」

「・・・雅紀」

「そもそも、オレのことが好きだと思ったなら『好きなんだけど、どう思う』って聞いたらいいのに」

「んなわけいくかよ(笑)」

「なんでだよ!聞けよ!」



せっかく抱き合って・・・はいないけど、抱きついてたのに、しょーちゃんもおとなしくしてくれてたのに、オレは勢いでうっかり離れてしまった。でも、仕方ない、これは抱き合ったままではどうにもならない。




「聞けるかよ!」

「なんで聞けねーんだよ!?」

「よーし、わかった、雅紀!じゃあさ聞くとしてだ・・・『オレさぁ、雅紀くんが好きでさぁ、付き合ったらキスとかしたりさぁ、抱き合ったりさぁ、そういうことしてみたいんだけどさぁ、雅紀くん、嫌がる?喜ぶ?どうおもう??』って聞けってか?・・・んなもん聞けるかぃ!」



急に具体的に言ってくるじゃん・・・。
なんだよ、キスとか抱き合うとか!
ヘタレしょうのくせに!

オレが煽ったみたいになって、なのに、逆に追い詰められてしまった感満載。



「・・・ってほら、な、雅紀もさ、そんなこと俺に言われたって、実際困るだろ?」

「べっ、べつに!困んねーけど」

「・・・そっか、はは、困んねぇか・・・ごめんな、言えなくてさ」



そういって、もうすっかり氷が解けてロックから水割りになってしまったウイスキーを飲み干して、そして。



「まぁ、結局のとこ、すべては俺のヘタレっぷりのせいなんだってことだよ。周りの奴はさ、『相葉くんなら絶対に大丈夫』とか気持ちいいコト言ってくれたけど、でもいざとなってはいつもなんも言えなくてさ・・・」



と、聞き捨てならないことを宣った。



「ちょっと待て、え?しょーちゃん、いま『周りの奴は』って言った?」

「言ったけど・・・?」

「周りって誰」



自分でも驚くほど低い声。
これ、オレ、怒ってるわ。



「え?」

「誰が、しょーちゃんが、オレを好きだと知ってるの」