翌朝。
寝不足ながらも気持ちは軽い。
幸い今日は金曜日で、一日頑張ればすぐに休みだ。
出勤前に帰ろうと思っていたが、あれからまた相葉くんと一緒に寝てしまったら思いのほかぐっすりで、気づけば朝になっていた。
相葉くんが『時短です』というから、そうかと受け入れて一緒にシャワーを浴びたのが間違いで。
その時も相葉くんはなかなかのイタズラをかましてくれたから、朝からぐったり・・・なのに、やっぱり満たされて。
そんなわけで結局、帰る時間もなくなった。
仕方なく相葉くんにワイシャツの替えを借りる。
「クリーニングして返すよ」
「・・・」
ネクタイを締めながら鏡越しに目を合わせれば
予想通り、期待通り。
背中越しに抱きしめてくれて。
「相葉くん?」
そして、予想していなかった答えが帰ってきた。
「・・・そのまんま着て、またここに帰ってきて欲しい、です。なんて・・・すみません、わがまま過ぎますか?」
やっと壁を取り払って、欲しいものを欲しいのだ、と、素直に主張できるようになったんだろう。
それが例えば、俺に向けるアレコレで。
少しずつでいい、でも、俺には加減なんかしなくていいし、して欲しくない。だからそれをちゃんと伝えたい。
「・・・雅紀が待っててくれるなら、俺はいつでもココに帰ってきたいよ」
彼の腕の中で体の向きを変えて、向き合って伝える。
ココ、と、彼の胸元をぽんぽんと叩いて。
「晩メシ、今日こそ智くんのとこで食おうよ。俺と雅紀のこと、報告しよ?」
「あの・・・翔、さん。」
「・・・ん?」
「・・・いえ、そろそろ、出ますか、わりといい時間」
「えっ!おいマジか・・・って、そうだ、ここ相葉くんのウチだ。いま出れば全然間にあうな、行こう」
口に出してはくれなかったけど、きっとなにか、めちゃくちゃ重くて、最高に嬉しいことを言ってくれようとしたんじゃないかって思う。
甘く柔らかな声で俺の名を呼んで
溶けるように熱い目で見つめてくれて。
それはまたいつか、言ってくれると思えたし、急がなくていい。
これからは、どれだけだって一緒にいられるんだ。
急に全てをさらけ出すのは難しいし、これまで生きてきた自分をいきなり変えることなんかできないけれど。
でも。
せっかくこうして出逢えた2人なんだ。
夜明けを共に過ごせば、何度だってまた2人で始められる朝が楽しみになるのだろう。
夜明け
おわり