目が覚めると、一瞬の不明、その後すぐに、息苦しさと汗ばむカラダで思い出す。身動ぎをすれば、すぐに抱きすくめられ、本当に寝ているのかと思うほど強く引き寄せられるここは、彼の腕の中。





「こんな感じ、なの?」



「・・・なにが?」



「んだよ、起きてんのか」



「・・・寝てます」



「いや、嘘だろ」



「寝てますから・・・さくらいさんも、まだここにいて」





そう言いながら、さらに強く抱き込まれて、暑い、苦しいと抗議をしても、全く意に介さず離す様子は無い。俺も本気で抜け出そうとすれば出来ることをわかってる茶番だ。

楽しんでしまってる時点でもう、彼の勝ち。



すこし離れてみては腰を引き寄せられ。
起き上がろうとすれば腕を引かれ胸元に。


こんな幸せなことがあるんだ。





「・・・さくらいさん、オレ、いますごく幸せ感じちゃってます。」



「ふふ、俺も、同じ事考えてた」





相葉くんの胸元に頬を擦り寄せて、人肌がこんなに気持ちいいと感じたことがあったろうか。自分の過去に思いを馳せるが、なかったとは言えないとしても、もはや思い出すことも出来ない。


すべては相葉くんに上書きされてしまった。



「・・・いま何時?」


「まだ、4時過ぎです」


「今こうして2人で過ごす夜明け前って・・・なんか好きかも」


「・・・オレは、ちょっと切なくなるかも」


「・・・なんで?」


「色んなこと考えちゃって・・・櫻井さんのこととかも。考えたって答えなんて出ないのに考えちゃって、気づけばこの時間で」



相葉くんが話すと彼の胸に頭を乗せているから、肌にぴったりとつけている耳へ声や呼吸が響いて、彼との近さに満足する。


「・・・不謹慎かもだけど、内容がどうであれ、俺の事を考えてくれているなんて、嬉しいとか言ったら、アレだけど、でも、うん。ごめん、嬉しい。」



そういうと、相葉くんは俺の頭を柔らかく撫でてくれる。大きな手が頭から襟足を優しく撫ぜて、そのまま背骨を指がたどる。


思わずびくっと反応すると、やっぱり言うんだ。



「ふふ、かわいい」




「・・・これからも、こんな時間に目が覚めたら、相葉くんがそばにいて欲しい、なんて言ったら・・・さすがに重い?」




「・・・え?」




「あー、いや、なんつーか・・・ん、ちょっとやっぱいいわ、まだ」



「なに?・・・話して?」



「ん・・・あのさ。俺、これまで結構バリバリ仕事して、自由に生活してて、別に女とかもどうでもよくてさ。でもちょっと日々のルーティンに飽きたなぁって思ってた。んで、ふと夜中に目が覚めると、ああ、また朝が来たら同じ明日が始まるんだなぁって、なんか、そんなふうに感じてる時期があって」


そんな毎日に、相葉くんと出会ったんだ。



楽しみな毎日。

少し張り切って仕事することも楽しくて、それは相葉くんの存在がかなり大きかった。


「たぶんさ、ちょっとストレスとかで、あんま深く寝れてなかったのかなって、今考えるとそう思うんだけど、変な時間に目が覚めるようになってたんだ。それが、相葉くんと仕事するようになってから、ちゃんと朝まで眠れることが多くて」



「嬉しいです。オレなんかが櫻井さんの役にたってたのなら」


「・・・前にも言ったよ?もう、相葉くんはなくてはならない存在だって」



いつのまにか俺のカラダを好きに触っていた相葉くんの手が止まった。大きな深呼吸にあわせて相葉くんの上下する胸元。



「・・・どした?」




「また、そう言って貰えて嬉しいなって。さっきも言いましたけど、ほんとうに救われたし・・・それで、そんなふうに思ってくれる櫻井さんのそばにいたいって、強く思ったんです。」



「お互い、お互いが必要ってことだ、な?」



相葉くんはゆっくりと起き上がると、俺の体も支えて起こす。


そのまま、ぎゅっと、抱きしめながら




「夜が明けるまで、一緒にいてください・・・それから、その朝と夜と、この先も、ずっと。」