「櫻井さんは、どんな恋愛してきたんですか?」


「来る者拒まず去るもの追わず、のスタイルでやらせてもらってました」


「ふふ・・・あえて聞いちゃいますけど、来る者は全部、拒まなかったスタイル、ですか?」


「・・・ノーコメで」


「それ、もう答えちゃってます」


「ははっ、だな」


「オレは一応、お互いしか相手にしないっていう約束で、関係を持ってたヒトはいましたけど・・・存在を大切にしてたかといわれたら、わかんなくて。あえて言うなら、失礼のないようにしていた、って感覚かもしれません」


「それは、相手を大切に思って、尊重してたってことでいいんじゃない?」



「それでいいのかな・・・」


「だって、それで、ちゃんと約束通り、相葉くんはその相手のヒトだけって、してたんでしょ?」


「はい、それは。」


「だったら、ちゃんと関係作れてたと思うよ・・・まぁ、うん、そうなんじゃない?」



俺も人のこと言えないのに、相葉くんが大切にしてた人間がいるってことに、驚くほど苦い感情を持ってしまって。



「・・・ちょっと、面白くないけどね、俺は」


グイっとハイボールを飲み干して


「氷、もらうよ」


とキッチンへ逃げた。





冷凍庫を開けようとしたところへ背後に立たれたかと思えば、そのまま背中越しの壁ドン状態。




追いかけてきてくれた事に安堵と満足感。
さっきのアレは、年甲斐もなく嫉妬なのだと認めて。
そんなそれは相葉くんが追いかけてくれたことで

簡単に甘い気持ちに変わってしまった。




「なぁ・・・俺とは向き合ってくんね?」



といえば、ちょっと強引に体を返されて抱きしめられる。



ぎゅぅっとゆっくり、でも力強く。




「さくらいさん・・・ずっと、こうしたかった。」




そして、それに俺も応えて抱き返す。



「オレ、櫻井さんに『相葉くんは無くてはならない存在だよ』って言ってもらえた時、ほんとにうれしくて・・・。」


「恥ず・・・そんなどストレートなこと言った?」


「・・・言った。」


「ごめん。ハラスメントじゃんね、そんなの」


「なにハラ?」


「パワハラなり、セクハラなり」


「オレが嬉しかったんで、ノーカウントです」



そう言って少し身体を離して、額にキスをくれた。



「・・・ぅう、なんかこそばゆい」


「ハラスメント、ですか?」


「いや・・・うん、嬉しい。そうか、ノーカウント・・・だな」



「オレの存在を認めてくれている人がいるって、それが櫻井さんで、もうどうしようもなく気持ちが溢れちゃって・・・だから、すみません。オレの方がむしろ、でした」


「むしろ?」



「・・・ハラス、メント?」


「相葉くんにハラスメント受けた記憶ねーよ」


「であれば、よかったです。自分的には、ちょっと、あるので。」



「なんかされたっけ」





ふふふと柔らかく笑う。
にっこりと可愛いく笑う。
でも、オスの顔で攻めてくるのもやっぱり彼。

相葉くんの『本当』に触れているって、思える。


相変わらず抱き合いながら軽口もきけるようになって、ふたりの空気が、カラダが、しっとりと緩んで馴染んで。


黙っていてもいいし。

言葉を重ねてもいい。


俺が不自然に抑えて燻らせていた熱をいとも簡単に超えて、それ以上で俺を求めてくれた相葉くんが、そこで笑ってて。




ぐっと、胸が詰まるような息ができない感覚に陥る。


急に湧き上がるこの熱。
逃げられない。
苦しいけど、手放したくない感情。




あぁ・・・俺。


すきだ、この男が。


ものすごく。




この、相葉雅紀という人間が、好きだ、と。

心から、そう、思った。