いつの間にか惹かれてた。
・・・いや、出会ったあの時、あの瞬間から
この時を期待していた。
会社の人間だとか
出会ってまだ間もないとか
同性だとか。
そういう他人に
俺じゃない誰かの価値観で言われそうなコト。
そんな曖昧なものに縛られて不自然に燻るより
認めた方が余程ラクだった。
ただ俺が、彼を、好きだと思った。
「・・・んッ、はァ・・・ぁッ」
「さく、らい、さ、ん・・・」
「ちょ・・・っ、と、まッ・・・、あ、あいば、く・・・んッ」
溺れるようなキス。
ずっと望んでいたような。
もしかすると恐れていたとも言えるような。
だって、こんな風に触れ合ったら
もう戻れないことは明白なのだ。
「櫻井さんが、欲しい・・・ね?」
「ね、って、ちょっ・・・まっ、て、あいばくん!」
グッと彼の胸元を押し返して熱い身体を離す。
■■■■■
相葉くんのマンションにつくと彼は、俺を一旦玄関前で待たせて自分は部屋へ。片付けでもするのかと思ったが、ドアの向こうから室内へ入っていく気配は無い。
ドアを隔てて、向き合っている。
お互いの息遣いを感じながら。
ほんの少しの間を持ったあと
彼は大きく息を吐いて
ドア越しに俺に言った。
「櫻井さんにオレの話を聞いてほしいです。でも、話してしまったら、オレは我慢できなくなると思う。それが何を意味しているか・・・櫻井さんはわかりますか」
わかるよ、と言えば。
俺がこのドアを開けて彼と目を合わせたら。
あの日の期待が、現実になるかは俺の選択次第。
でも。
ここからまた不自然に燻る日々を送ることは
もう無理だと思った。
「俺は、一緒にいるよ、って言っただろ?」
そう言って俺は自分で
相葉くんの家のドアを開けた。