智くんから頼んだ以上の料理を受け取って、お礼もそこそこに店を出た。
相葉くんが俺の手を握ってぐいぐい出ていこうとするもんだから。
さすがに智くんの前で、シラフで、平気な顔で手をつなぐことはできない
・・・のだが、相葉くんはお構いなしに。
智くんも驚くどころか、むしろ嬉しそうに送り出してくれる。
『また二人でおいでね』って。
そういいながら、やっぱり相葉くんとなにやらアイコンタクトで会話をしている。
智くんはにこにこしながらガッツポーズを決めてるし、
相葉くんは眉間にしわを寄せて、何やら神妙な面持ち。
智くんと仲良しじゃん。
俺が仲良くしてるって言ったって、お店の店主と客って程度だぞ。
そんなことを頭の中で考えつつ、ふと、手の感触に意識が奪われる。
相変わらずおおきくてちょっと熱い相葉くんの手。
握り返すのもなんとなく気恥ずかしくて、引かれるがままにされている。
・・・本当は、ものすごく嬉しいのに。
それとはまた別のところで、
相葉くんの機嫌を損ねた理由が思い当たらず、不安が募る。
「相葉くん、ちょっと待って」
「・・・・・・」
俺の呼びかけを明らかに無視しているという態度でどんどん家に向かってる。
前に来た時に立ち寄ったコンビニへの曲がり角。
「相葉くん、コンビニは?ねぇ、ビール買っていこうよ」
「家にあるので、大丈夫です。氷も、水も、炭酸も。」
「・・・そっか」
まるでここで止まったらもうたどり着けないんだっていうくらい
まっしぐらに俺を引っ張っていくから、だんだん可笑しくなってきた。
「・・・櫻井さん、なに笑ってんですか。」
「だって、あまりにも必死だから、なんかおかしくて・・・」
「そりゃ、必死にもなりますよ」
「なんで?」
「家に着いたら、話します。だから・・・聞いて下さい。」
ぎゅっと強く手を握られる。
相変わらず俺を見ないで一生懸命歩く背中を見ていたら、
なんだか急にこの男への愛おしさが募ってしまって。
こちらからも手を握り返してぐっと立ち止まったら、やっと振り返ってくれた。
眉間に力が入って唇を結んで。
まるで泣くのを我慢しているような、そんな、顔。
「・・・なんて顔してんだよ」
「だって・・・」
「だってって、こどもか(笑)」
「こどもでもいいです、櫻井さんを引き留められるなら。」
「だいじょうぶ、ちゃんと一緒にいるから、ゆっくり歩こう・・・な?」
つながれた手とは反対の手で背中をさすってやる。
不用意に触れたその身体は、驚くほどの熱さだった。