「羨ましい・・・って、相葉くんだって智くんとは本当に仲良く見えるよ?え、実はそうでもないの?」
紹介してくれた本人を差し置いて、知らないところで繋がりを持つことは、たしかに社会人として失礼だったかもしれない、とあらためて考えてみる。
「ごめんな、ついつい甘えちゃってたけど、もとは相葉くんに紹介してもらっていたんだから、店に来る時は先にひとこと言うべきだった・・・ごめん、気ぃ悪くさせて」
「あの」
と、あまり俺には向けられたことの無い強く低い声。
「・・・ん?」
「櫻井さん、それ、本気で言ってます?」
相葉くんからは、すでに作り笑顔も消えていた。
その様子に気圧されて、戸惑いを隠せない。
「本気・・・って、え?」
ふざけたことはひとつも言った覚えはないし
冗談と受け取られるような態度もとっていないはずだ。
だが俺はどうやら、相葉くんのご不興を買ったらしい。
相葉くんは俺を責めるでもなく、じっと俺を見つめてる。
瞳の奥に言いようもない昏い熱を孕んでいるような
真っ黒な瞳で。
「本気でっていうか、決してふざけてはいない。だけど、気分を害したことがあるなら、ごめん、あやまる・・・だから、なにが気に障ったか、聞かせてくれないかな」
「あ・・・いや、すみません、こちらこそ。なんていうか・・・気に障ったとかじゃなくて、ちょっと、伝わってなかったことが、思ったより寂しいなって」
「・・・なにが・・・伝わって、ない?」
そう聞き返した俺を見て、苦笑い。
よほど俺の察しが悪いらしい。
「ごめん、俺、相葉くんに甘えすぎだよね、なんでも言ってもらえると思っちゃってた」
最近の相葉くんとの距離感と関係性が俺を鈍感にさせていた。
頭ポンポンでハラスメントかも、なんてびびってた俺の危機感はどこへいったのやら。
どうしたものかと逡巡していると、相葉くんからの予想外な提案。
「あの・・・ちゃんとお話ししたいので、このままうち、来ませんか?」
「え、うん、それはもちろん全然いいんだけど、」
と、いうが早いか
「おーちゃーん!ごめん、帰る!頼んだもの、持ち帰りにして!」
相葉くんがカウンターに向かって叫んだ。
「おー?いいけど・・・2人で食うんだよな!?」
「うん、オレんちで食えるようにしてもらえたら助かる」
「よっしゃ、ちょっとまってろ、すぐ詰めてやるから!」
ほら、相葉くんだってよほど智くんと仲が良いじゃないか。
なんか意味深にアイコンタクトで会話してるし。
智くんだって相葉くんに頼まれてなんだか楽しそうにしてる。
俺もあんな風に相葉くんと目配せしてしてみたいよ。