ひさしぶりに
ほんとうにひさしぶりに
2人の時間をすごして
性急に求め合って
足りなくて足りなくて
とにかく埋めたくて
混ざりあいたくて
どれだけ喘いで
どれだけ吐き出して
「雅紀…ッ、もっと、もっと、つよく…ッ」
「ん…しょ、ちゃ…気持ち、い?」
「…ッ、んァッ、まさき…俺、もう、無理…アッ…ッ」
「我慢しないで、イッていいよ」
「アッ、ダメ、だ…イクッ………ん、んッ!」
2人で熱くなったカラダを震わせて
抱きしめあって
上がった息がいつのまにか
波のリズムに合わせて穏やかに落ち着く
海を見に行くって
記念日を気取るわけじゃないけれど
それでもこうして今日という日を
一緒に過ごしてくれる
体温の高いコイツの胸元に背中を預けて
波の音を聴きながら
ココロが
カラダが
満たされて凪いでいく
「倫理とか、道徳とか、そういう観念みたいなもんってさ」
「なぁに、しょーちゃん、難しいハナシ?」
落ち着いたら
欲が満たされたら
なんとなく
深い意味もなく
甘いピロートークらしいことをしたいのに
雅紀にはついつい甘えて
まとまらない思考で
つまらないアレコレを
ぽろぽろとしゃべってしまう
「あー…いや、やめとくわ」
「フフ、いいよ、ってか、聞きたい。」
「まとまってねーから、またにするわ」
「大丈夫だよ、すきだから」
そう雅紀が何か言う度に
頬から首筋にかけて
あたたかな息がかかるのを感じる
その心地良さがなんだか気恥ずかしくて
「…アナタも脈絡なくしゃべるね」
事後に抱きしめられたままの体勢で
甘いシチュエーションに似合わず
可愛げのない返しをしてしまう
「しょーちゃんがとりとめなくしゃべり出す時って
なんか、可愛いから、なんかすき」
「かわいいって…」
わかってる
雅紀はどんな俺も受け入れてくれる
どんな時でも俺だけに発動する
雅紀の忍耐と受容に甘えて
こうして2人で過ごしてきた
「しょーちゃんと2人でなんにも縛られないで
こうやって海とか見ながらさ」
「うん」
「お互いの肌を感じあってさ」
「…ん」
「ただ、自分たちだけの、オレらだけのことをさ、考えて、
しゃべるのってさ」
「うん」
「なんか……なんか、だよね」
「なんだよ、なんかって(笑)」
「わかるじゃん、なんか、なの」
彼らしい感覚優先の
俺が好ましく思っている雅紀の言い回し
あたたかな息が
耳を食む唇の感触にかわり
それを感じながら続ける
「…雅紀はさ、」
「うん」
「許されないこと、ってコトがあるとしてさ」
「…うん」
「だれが、許さない、と…思う?」
ずっと
いつも
腹の底にこびりついている疑問
誰に聞いても答えは明快で
それでいて
でもきっとそれは「正解」ではない
少なくとも
俺と雅紀にとっては
なにも答えなくていい
解答を求めた言葉じゃない
ただこぼれた疑問
しばらくじっとしていた雅紀が
優しく
それ以上に強く
俺を抱き締めて
「誰が許さなくても、べつに」
やわらかな声のトーンが落ちる
雅紀がほんとうをしゃべるときのそれ
「…べつに?」
「地獄に堕ちればいいだけだよ」
……正解だ。
そうだ
それでいいんだ
雅紀のぬくもりを手放すくらいなら
地獄に堕ちればいいといったその唇は
強引に引き寄せた俺の口内を
めちゃくちゃに犯して
また俺は思考を失う
雅紀のくれる熱い快楽にはしたなく喘ぎながら
心地良く繰り返される快楽の波に
また、溺れた。