「ただいまぁー」



朝のジムで汗を流して帰ると
コーヒーの香りと賑やかな話し声


「ほらぁ、雅紀さん帰ってきたから」


バタバタと足音をさせて駆け寄ったしょーちゃんが
汗だくのオレに勢いよく抱きついてくる。


「まっさきー!おかえりッ」

「ッ!ちょっ、ちょっと!しょーちゃん!」

「もー!しょおくん!朝ごはんは作っとくから
    とりあえずシャワー浴びてきてよ!」

「うっわ!酒くせー!しょーちゃん朝から何してんだよ!
   この酔っぱらい!」

「んだよ!2人して俺をノケモノにしようとして!」



オレは潤くんに『やれやれ』といった視線を送ると
潤くんも苦笑いで返してくる。



賑やかな朝。
そして、気持ちが明るくなる
安心するいつものやりとり。



それは
潤くんとカラダを交わしてからすぐ。

しょーちゃんは待ってましたとばかりに住むところを嬉々として探し出し、同じマンションの別の部屋に住もうと提案してくれた。

オレは自分の仕事では2人とおなじレベルの生活は出来ないって言ったら、しょーちゃんはオレに『雅紀、モデルやんねーか?』って軽く言って、潤くんは大いに喜んだ。

しょーちゃんは
『俺は経営とマネージメント、
   潤と雅紀でモデルっての、どう?』
と。




「俺は!仕事だと思ってイヤイヤ飲んできたんだぞ!」

「…イヤイヤ?」

潤くんが鋭くにらむ。

「うぅ……雅紀ぃ、潤が怖ぇよ」

「ほら、しょーちゃん?潤くんはね、朝まで節操なくバカみたいにお酒を飲んだことを怒ってるんじゃなくて、しょーちゃんの事を心配してるんだよ?可愛く言えないだけで、ね?じゅーんちゃん?」

「節操のないバカヤローの俺はどうしたらいいんだ……」

「雅紀さん、言いたいことはあるけど、一旦置いておくとして。とりあえずその人を風呂へ入れて?」

「しょーちゃん、お風呂はいろっか」

って、しょーちゃんのタバコと酒と汗の混ざったちょっとクサイ頭にキスをする。

「うん……」

ほんとにまだ酔ってるんだったら
確かにひとりではダメだと思うし
それよりも、なんだか可愛いし。

「しょーちゃん、キレイにしてあげるね」

「ん、お願いします」

「まったく、そうやって雅紀さんが甘やかすからこの人、ぜんぜん自分の部屋に帰らないじゃん!なんでそもそも雅紀さんの部屋に帰ってくるんだよ」

「ぜんぜん帰ってなくないですー!
    着替え取りに行くためにかえってますー!」

「しょおくん?屁理屈言ってると朝ごはん作らないよ?僕はいっかい部屋帰るけど、すぐ戻ってくるからね!出かける準備ちゃんとしてよ?」


『今日も仕事だってわかってるよね?』と、強めに念押しして、潤くんは出ていった。





2人になればそれはまた心地よく
ゆったりと凪のような時間


汗だくのTシャツを脱ぐと
しょーちゃんが背中にキスをくれた。



「しょっぱい」

「そりゃ、汗かいてるもん。
   しょーちゃんは……ふふ、ちょっとクサイよ」

って言いながら振り返って抱きしめる。

「ほら早く脱いで?潤くんを待たせちゃうから」

「雅紀が離してくれないと脱げない……」

「離して欲しい?」

「……欲しくない」

「よかった、オレも離したくないよ」

「なぁ………雅紀……あたってる」

「うん、あててるね」

「誘ってんの?」

「しょーちゃん次第かな」

「……緊張、してる?」

「………してる。」


大丈夫だよって、やさしく背中を撫ぜてくれた。


今日の仕事は
モデルとしてもオレたち3人の仕事としても
かなり大きな転機になるもの。

どうしたって浮き足立って、落ち着かなくて、朝から汗を流してきたけど、おさまらない緊張感。しょーちゃんを抱きしめてる間は少し落ち着ける…けど、ずっとこうしてはいられない。


『おまじないしてやるよ』ってオレの腕からすり抜けたしょーちゃんは床に膝を着いて、トラックパンツとアンダーを一気に引き下げた。