「…まぶし、」
微睡みの中
見慣れない天井の下
心地よい香りに包まれて
自分が何者かを思い出す
「潤くん…」
掠れた声で呼ぶともなく彼の名前を空に放つ
ひたひたと足音が聞こえて
ベッドがぎしりと鳴って
傾いた方へ顔を向ければ
とろけるような瞳でオレを見る愛おしい彼
「雅紀さん…おはよう、カラダ、大丈夫?」
「……だいじょーぶ。おはよ、潤くん」
腕を広げれば潤くんは当たり前のように
抱きしめながらキスをしてくれる
それはもうずっとそうしてきたかのように。
「んッ……はぁ、ぁンッ…ん」
舌を絡めて深くなっていく。
そして見つめあって何となく気恥ずかしくも甘い時間。
「雅紀さん…コーヒー、のむ?」
「ん、……のむ、いい香りしてる……」
「特別なの、淹れたから」
昨夜の名残がカラダを重くさせてるけど
気持ちはとても凪いでいる。
ゆっくりとコーヒーを飲みながら潤くんが
「しょおくんに会いたいな……」
と言った。
しょーちゃんに連絡したら『待ってた』と返事をくれて
カフェで仕事をしてるからと場所を教えてくれた。
「潤の服、似合ってるじゃん」
会うなりそう言ってオレを抱きしめる。
そうして俺を抱いた肩越しに
「潤、おまえ、顔が溶けてるぞ」
って、からかうでもなくそう言うと
「……自覚してる。」
と、これまた神妙に答えるから思わず笑ってしまった。
仕事は終わったって言うしょーちゃんが
美味しそうにビールを飲んでさっそく切り出す。
「で、どうした?潤が俺に用、あるんだろ?」
久しぶりにニヤニヤしてるしょーちゃん。
なんだかとっても楽しそう。
「しょおくん…あのさ。ストレートに言うね。僕、雅紀さんと、しょおくんの『生涯の伴侶』になりたい」
「潤くん……」
「……無責任、って言ったのは、いまはどう思ってんだ?」
「うん…責任って誰が誰にとるのかって考えた。でも、答えは見つかってない……っていうか、これって僕ひとりで考えることじゃないってのが、今の結論。だって、これは僕だけのことじゃなくて、僕たち3人の事だから。僕は、このことを、しょおくんと、雅紀さんと、3人で考えていきたい。
……生涯をかけて。」
オレはしょーちゃんを見ると
しょーちゃんもオレを見て優しく頷いてくれた。
「……雅紀、よかったな」
「うん、なんか……うん、よかった。すげぇ嬉しい。」
「俺と雅紀の間には、明確な約束とか決まり事はないんだよ。
ただ、お互いを、その関係性を、大切にするってことだけだ」
「しょおくんと、僕のこれまでの関係性も大切にするし
雅紀さんとしょおくんの関係性も、大切にするね。」
「始まったばっかりの雅紀と潤は、まだまだこれからだ。ふたりのカタチを楽しみにしてるよ。俺も、2人を大切にする」
そういったしょーちゃんはオレと潤くんの手を握って
それぞれの手の甲にあたたかなキスをくれた。
オレはそんなしょーちゃんの温もりを感じながら
「しょーちゃん、潤くん。ずっと、一緒にいようね。」
って、言うのが精一杯だった。