それからというもの
潤くんは遠慮がなくなった。
「雅紀さん、今日、うち来る?」
って、仕事中のオレの頬を撫でながら
あのMJの瞳をフル活用してオレを射抜く。
これまたカッコイイんだよなぁ。
下を向いてたオレの顔を上げさせてくれたMJ。
いつの間にか
あこがれの瞳の人から
そばにいて気持ちのやり取りができる距離の人になった。
ずいぶん『なかよし』になった、ケド。
…カラダは、まだ。
でも時間の問題だと、オレは思ってる。
そう思えるまでになった。
最近は店のカウンター越しに飲むのをやめて、テーブルで過ごすようになった。それもあって、潤くんはオレに少しづつ触れるようになったし、オレもそれを受け入れてる。
あの3人で話した夜にオレが抱きしめたことで
体に触れることをお互いに許しあった……ってトコかな。
でも、逆に
2人で会う時に潤くんの家に行くことはなくなった。
行く時はしょーちゃんと一緒。
「お誘いありがと、でも今日はごめん」
って、潤くんの手をとって、指先にキスをする。
「そっか、ざーんねん」
とか言うけど、オレはわかってる。
潤くんがストレートに誘う時は
必ず、オレがしょーちゃんと約束してる日。
それはもしかしたら…
本当にたまたまかもしれない
けど
しょーちゃんを断って自分の方を選ぶことを
望んでいるのかもしれない。
遠慮なく家には誘うしオレに触れるようになったわりには
断る理由がない時に誘わない配慮。
そして、断っても気まずくならない軽薄さを装う。
本当にオレの気持ちを第一にしてくれてるのが伝わってくるから、応えていいような気がしているのも事実。
でも天秤にかけるのは嫌だ。
しょーちゃんの時間は大事。
それとは別のところで
潤くんがオレを追い詰めてくれるのを
待ってるズルい自分も自覚してる。
断る理由があるのとは逆に
もうこれは断れない
潤くんのせいなんだから…って。
臆病なオレは
だから
しょーちゃんが何気なく
潤くんとオレの関係を進めようとしてるのも
実は悪くないどころか
ささやかな期待があるのも否めない。
そんなふうに考えながら綺麗な潤くんの瞳を見ていたら…
誘うように睫毛が降りる
伏し目がちにしてるから
瞳にオレが映らない
MJの
潤くんの
あの瞳に映り込みたくてカレを覗き込む
気づけば
そのまま
くちびるを重ねていた。