「俺にとって『愛し合う』ってのは、必ずしも1対1である必要はないんだ」


今度はオレがしょーちゃんに寄り添う番。


「だからって、節操なくあっちでもこっちでも……ってことじゃない」



そう言ってオレを見つめてくれたしょーちゃんは

目が少し潤んでて

こんな時に不謹慎ながらも

オレに抱かれてるしょーちゃんを思い出す。



……そっか


いろんなものをさらけ出そうとしてる

何者でもないしょーちゃん


大丈夫
オレがそばにいるから


そんな想いを込めて、オレを見てるしょーちゃんの髪をかきあげながら可愛いおでこにキスをする


「……」


潤くんはそんなオレらのやりとりを非難するでもなく、茶化すこともせず、じっとしょーちゃんの言葉を待ってる。しょーちゃんの気持ちが落ち着くのを待っててくれてるのがわかって、オレはそんな潤くんがいてくれて、とても嬉しい。


ふっと、小さく息を吐くと潤くんに向き合って、あらためてしょーちゃんは話を続ける。

「1対1である必要もないし、男女である必要もない。お互いに『愛おしい』と思えば……それだけでいいんだ。」

「お互いに、愛おしいと思う…」

潤くんは大切な言葉のように小さく繰り返した。

「そう。夫婦だから、親子だからっていう、そういう肩書きで当たり前に愛情が存在するわけじゃない、ましてそれが永遠だなんてわけがない。……俺は今、雅紀を大切にしてる。そして、雅紀をひとりの人間として大切にするのと同じくらい、ふたりの『関係性』を大切にしてる。」

「…関係性」

「あぁ。そもそも血縁や法律、制度でお互いの立ち位置を表すことに意味は無いんだ、俺にとっては。それこそ他人にわかりやすい『情報』でしかない。」

「うん、それは僕もわかる……そういう風に改めて言葉にしてみたことはなかったけど」

「世間でいう『ともだち』同士がお互いを大切に思えて、居心地がいいなら、『生涯の伴侶』としてずっと一緒にいればいいんだよ。」

「……しょおくんと雅紀さんは、『生涯の伴侶』、なの?」


あらためてひとから聞かれたことはなかったから
だから、この問いに答えたことはなかった。


ただ、オレたちの答えに迷いはない。



「そうであろうとしてる。」