潤くんは、相変わらず店に来る。
それとは別に、よく連絡をくれるようになった。
オレは誘いを断る理由もないし
憧れのMJだしってことで
頻繁に2人で会うようになった。
たまに、潤くんの家にお邪魔することもある。
そんな時はゆっくり飲みながら
新しく買ったというリトグラフとか
オレにはわかんない置物とか
いろんなアートなものを解説してもらったり
野球やサッカーを観たり、映画を見たり。
「…雅紀さん、僕さ、ずっと気になってることがある」
映画のエンドロールを眺めながら、ふと、切り出された。
ついに潤くんから聞かれるんだな、と思った。
「…なに?」
「こんなこと聞くの、ヘタレてるなぁって思うんだ。でも、聞かないで気にしないフリして強がっても…たぶんいいことない。」
「しょーちゃん、の…コト?」
「うん」
「ついに聞いてきたね」
「うん。ずっと、雅紀さんが僕に近付いてくれるの待ってたから…そろそろ、聞いても許されるかなって。」
「…射程距離かなって?」
「うん、まぁ…もう我慢出来ない、ってのもあるし」
「おいおい、我慢できないとか怖ぇこと言うなよー」
「あはは、襲ったりしないから安心して」
軽口をききながら潤くんが緊張してるのが伝わる。
いいよ、オレから切り出してあげる。
「何、聞きたい?いまの潤くんになら、何を聞かれても、なんでも答える。」
「…ありがと。なんか、そう言われると、何聞けばいいのかわかんない…」
「すぐに全部じゃなくても、今一番気になることがあれば…なんでも言ってみ?」
「…じゃ、もうストレートに。しょおくんとカラダの関係になったきっかけって?もともと友達だったんでしょ」
「っはは!マジでストレートで聞いてくんね(笑)」
「うん…やっぱそれが、1番わかっときたいコトだし。」
「素直でよろしい」
「ある程度察してると思うけどさ、キッカケは単純だよ。オレの失恋をカラダで慰めてくれた…ってことかな」
「ともだちから、そんな感じに、なれたの?」
「んー…それこそ、カラダを繋げることは『ともだち』って関係を、変えなきゃいけないこと?」
「あー…どうかな…僕の定義では…うん。」
「ま、そーだよね、そりゃ、そーなの。ただ、オレらは、そこんとこの感覚がハマったっていうか」
「でも、しょおくんは『セフレ』については完全に否定する言い方をしたよね。むしろわかってもらう必要はない、くらいの。」
「潤くんにはわかって欲しいから、あんな言い方したんだろうな」
「…そう、なのかな。」
「オレも、潤くんには、わかって欲しい。だから…話してる。」
なにか逡巡するような素振りを繰り返してる。
グラスを持っては飲まずに置いて。
グイッとひとくち煽ってから
やっと決めたひとこと。
「…ねぇ、しょおくんも呼んでいい?」
「いまから?」
「…ダメ?」
「ふふ、いいよ。しょーちゃん呼ぼうぜ。」
潤くんがしょーちゃんを呼ぶと
それはそれはニヤニヤしながら…
そして
ものすごく嬉しそうにやってきた。