No.1
かたん、かたんと、電車が揺れていた。
向かいの座席で、若い女の子たちが顔を寄せ合って笑っている。
声は聞こえない。
笑うたび、肩だけが小さく揺れた。
右隣の男は膝の上に薄いパソコンを開き、青白い光を指に映している。
左隣からは、酒と、少し湿ったにんにくの匂いがした。
暖房の効きすぎた車内で、頬だけが妙に冷えている。
膝の上には紙袋があった。
金色の細い持ち手が、電車の揺れに合わせて指に触れる。
今日だけ着たドレスは、まだ身体のどこにも馴染んでいない。
耳元の飾りが、揺れるたび微かに触れ合った。
足の奥に、ヒールの痛みが残っている。
目を閉じる。
目を閉じる。
白い花の多い会場だった。
グラスを置く音まで静かで、
誰かが歩くたび、
絨毯が音を吸い込んでいた。
新郎は、
人に囲まれることに慣れているように見えた。
花嫁も、
誰に声をかけられても、
少しも急がずに頷いていた。
二人のまわりだけ、
時間の流れ方が違うみたいだった。
自分のいる場所を、
ちゃんと知っている人たち。
そんなふうに見えた。
目を閉じたまま、
紙袋の持ち手を指でなぞる。
金色の紐が、
少しだけ指に食い込んだ。
続く