No.2
電車のアナウンスが、
水の中みたいに遠く聞こえる。
ゆっくり目を開ける。
降りる人たちの気配に混じって、
身体が先に立ち上がっていた。
ヒールの底が、鈍く床を打つ。
改札を抜ける。
夜の空気は少し湿っていて、
遠くを走る電車の音がまだ聞こえていた。
白い光の窓が、
暗い線路の向こうを流れていく。
はあ、と小さく息が漏れる。
今日見たものが、
まだ身体の中に残っている気がした。
笑い声も、
祝福の言葉も、
きれいな横顔も。
しあわせな空気の中にいたはずなのに、
胸の奥が少し重かった。
家のドアを開ける。
「ただいま」
「おかえりーー!」
子供の声が飛んできた。
ぱたぱたと足音がして、
小さな身体が勢いよく抱きついてくる。
奥から、
「おかえり」
と旦那が顔をのぞかせた。
「ほら、もう遅いから寝ないと」
「うんー」
そう言いながらも、
子供はまだ腕にしがみついて顔を押し付けている。
「どうだった?」
コートを受け取りながら、
旦那が聞く。
「うん、よかったよ」
少しだけ口元をゆるめて答える。
ちゃんと笑えていたかは、
自分でもわからなかった。
ピアスに手を触れる。
外した耳は、少し軽かった。
続く