【長】新撰組小説 「時の過ぎ行くまま」 No.70 | 宇宙屋本舗【イラスト&文章の創作屋】

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【薀蓄】ケルト・アイルランド神話メイン。神話と心理が得意分野。

【目次】

前回のストーリー(No.69)はこちららから

――紺青の決別 06――

私は神社を出ようか迷った。

もうこうなるとどこで斬り合いになってもおかしくはないが
流石に神社の境内での刃傷沙汰は気が引ける。

私は暫く提灯の灯りを眺めていたが、炎がじじっと音を立てて煙が立ったのと同時に鳥居へ向かって歩き出した。

鳥居まで後数歩と言う所まで来た時だ。

「キエエーッ」と奇妙な声をたてて男が一人、右奥の背後の茂みから飛び出してきた。


私は地面を蹴って、勢い良く鳥居を抜けると、振り向き様、強い口調で問う。

「一人じゃありませんね?!出てきたらどうです!?」

その声に男が三人出てきた。
合わせて四人。

「やぁ、やれやれ…ちょっと安心していられない人数だなあこれは」
私は苦笑した。



――無理だ。


どうもこいつら斬り馴れているようだ。

まず刀をきちんと研いである。
刃こぼれがあるにはあるが手入れが行き届いている。
なまくらじゃないことはみれば解った。

しかも晴眼に構える姿が堂に入っている。
切っ先にブレがない。

四人で囲まれて斬りかかられたら、ちょっと太刀打ちできるとは思えなかった。

試衛館の天然理心流に、“囲い”という戦法がある。
要するに、一人を取り囲んで何が何でも相手を打ちのめす戦法だ。

――ウチにもあるんだから他の流派でも似たようなのがあるに決まってるさ

打たれる側の相手がどんな目に遭うのか知っている私は苦笑した後、提灯の灯りを吹き消し少し遠くへ放り出すと、素早く抜刀した。

気配を研ぎ澄ましてみると、出てきた四人以外にも数名の伏兵がいることに気付く。
まぁ一人相手なら四人で余裕と言ったところだろう。

と、同時に私の背後に回っていた一人が声も立てず斬りかかって来た。

私は右に半身避け、そのままナナメに左へ体を回転させると、右側の相手に向かって行く。
相手もとっさに構えて、鍔迫り合いの格好になった。


しかしこれはマズイ。
これだと背後ががら空きになる。
案の定、鍔迫り合いをする相手向い側……私の背後になった男が突っ込んできた。

私は刀にぐっと力をこめてから、手前の男をその勢いに任せて突き飛ばし、そのまま腰をかがめて右手側へ避けた。

背後から迫った男と、私と鍔迫り合いをしていた男が鉢合わせの格好になり、そのまま植え込みへもつれ込んだ。

なるほど。幾ら斬りなれてるとはいえ、どうやら暗がりの実戦には馴れちゃいないとみえる。

しかし、どうも気になる。
一人に対しての効率が良いとはいえ、今新規の隊士に教えている真っ最中のこの戦法で幾らなんでも攻めてくるか?
偶然にしちゃ出来すぎちゃいまいか?

と、その考えもつきつめられぬまま、今度は体勢を立て直した残りの二人が一斉に私の方へ向かってきた。

――やれやれ、考え事もできゃしねえや。

立ち上がろうと腰に力を入れた時だった。


神社の奥から突然駆け込んでくる小さな影が一つ。
私の向かって左側から攻め込んでくる男の前を掠めた。
突っ込まれた男が「ぐえっ」と低い声で唸って地面へ倒れこむ。

「何・・・」

私がそう答える間に、影はそのままもう一人の背後に回った。

虚空を斬る音が聴こえたと同時に、その男も「うっ」と呻いて地面へ倒れこんだ。

私はそれにあっけにとられていると、その影がぼそりと何かを喋った。

「……うしろにおるぞ」

私はその言葉で背後の植え込みにもつれ込んだ二人を思い出し、
左ひざを地面につけたままぐるりと回転すると、イキオイに任せて剣を振るった。
その切っ先が襲ってくる男の小手を捉えたらしく、男は「ギャッ」と叫ぶと刀を落とした。

とっさに私は立ち上がると、もう一人の男が走って逃げようとするのを前に回って制止した。

「まさかここまでやっておいて、逃げちゃうってのァどうなんでしょうね」

私はそういって構えると、唸るように言う。

「構えなさい。逃がしませんよ」

男は、やけくそになったのだろう。
メチャクチャな体勢で「ウォオオ」と雄たけびながら私へ向かってきた。

私はフッと一度息を吐く。
私から向かって右の、男からは左側にあたる側には大きなスキが出来ている。
私は体を右へ流して、男の肝臓のあたりに向かって刀をやや下段から上へ向かい流した。


やや浅めに切っ先が男の腹を掠める。

殺さず捕まえて首謀者を吐かせた方が良さそうだと感じてのことだった。

と、そこへ数名の足音と、
「沖田のぉおーッどこだぁーっ」
「沖田君っ!!!」と聞きなれた声が二つ響く。


その声に慌てたように、私の窮地を救い、かつ二人手早く斬った、小さな黒い影は、素早く闇へ紛れ込んでしまった。


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