手作り石鹸の世界で『ソーバー』という言葉が良く出て来ますが、ソーバーと言う意味の由来が判らない為あまり使いたくない単語なのです。
ソーバーと言う単語が嫌いだと言いながら、今日のタイトルである「そば屋のソーバー」を始めます。
石鹸つくりの4大要素は、「材料選択」「鹸化率決定」「鹸化促進の為の水分量」「鹸化促進の為の温度」です。
そば作りは全くの素人ですが、要素としては「材料選択」「水質と水分量」「そばを打つときの部屋の温湿度」「そばを打つ時の水の差し方」では無いかと思っています。特に水の差し方が肝心なのだと思っています。
石鹸とそばは何が共通か?と言う事に成るのですが、そば打ち作業ではそば鉢のそば粉に少量の水を指し10本の指バタバタ動かしそば粉を小さな団子状に作り上げる処がそば打ちのミソであると思うのです。
初めてそばを打つ場合この小さな団子ができず、出来上がったそばはボソボソのそばで腰も無いそばとなってしまいます。
小さなそば玉がそば粉のグルテンの力で寄り集まって腰のあるそばができているのだと思うのです
では、そばが石鹸とどの様に関連するか?と言う話に移ります。
石鹸は脂肪酸ナトリウムの集合体であり、各種の脂肪酸が非結晶状態(液晶)でお互いに結びつきながら固まっている物です。
私が注目しているのは、各種脂肪酸がお互いに結びつきながら固まっているということと、小さなそば玉がグルテンで結びつきながら固まっていると言う事が同じであると理解すべきなのだと言うことです。
石鹸つくりでトレース完了というのは、サラサラだった油脂が一定の粘度を持ってサラサラで無くなった状態を言います。ミクロの世界で表現すれば各種の油脂に含まれている脂肪酸が苛性ソーダと反応してできた脂肪酸ナトリウムが出来お互いにくっつき会おうとしている状態だと思うのです。
油脂には脂肪酸以外に多くの不純物(皮膚に良い物も悪い物)があり、苛性ソーダとは反応しない物も有ります。従って、油脂全量が脂肪酸ナトリウムに変化したと言う事ではないですし、撹拌時間内で全ての脂肪酸が脂肪酸ナトリウムに変化し切れていません。
24時間の保温中にも脂肪酸ナトリウムが新たに誕生しているし、各種の脂肪酸ナトリウムがお互いにくっつきあおうとしていると考えています。だから、完成度の高い石鹸は肌理が細かく硬く安定した石鹸になるわけです。
どうですか?何となくそばと石鹸が同じようなプロセスで出来上がっているのだな?とお感じに成りませんか?
そば屋ではなく、ソーバーの皆さんのブログを拝見していると、10時間放置後にトレース完了と言うような書き込みをみますが少し変ですよね?
撹拌により脂肪酸と苛性ソーダを化学反応させる作業を行うわけですが、10時間後などと言う話を聞くと、「本当に撹拌していたの?」思うのです。
そば粉を打つとき少量の水で小さなそば玉を作るワケですが、油脂と貸せーソーダの撹拌が不足では腰の無いそばと同じ事となります。
やはり、手動撹拌でも30分でトレースが完了できる位、大きく早く力強く撹拌しなければ良い石鹸はできません。
非力で根性なしの私はこの奴隷的強制労働から逃げる為に電動撹拌機を使っています。
脂肪酸と苛性ソーダの化学反応スピードは、水分と温度により決定されます。水が多く温度が高ければ早く反応するのです。(保温中も最低40度以上となるようにするのはこのためです)
皆さんは油の温度と苛性ソーダ水の温度がほぼ同じ温度で合わせ撹拌をしていると思いますが、何度で合わせているのでしょうか?
油脂に含まれるビタミン等を壊さないようにしようと言う思いが強く、苛性ソーダを油脂に投入する温度を50度とか40度という低温で処理していませんか?
以前にも書きましたが、ミスチリン酸等の融点は約70度です。非常に高温です。
このような低温状態で力いっぱい撹拌しても脂肪酸は苛性ソーダと充分反応し切れませんよ!だから、10時間後にトレースができたということに成っちゃうのです。
即ち、このような作業では美味しいそばは食べられないと言う事なのです。
(このことが言いたいために今回は非常に長い前書きをした次第です。)
日本では前○○子氏の本が教科書だという方も多くいらっしゃると思うのですが、低温での撹拌ということが書かれていますよね。
私の経験では最低60度~65度で油脂と水酸化ナトリウムを合わせて撹拌を開始し、トレース完了時の温度も最低50度で終了とすることが良い石鹸作りの秘訣だと思っています。
型入れも50度±5度で行いたいと思っています。
一般的には夏場猛暑時の石鹸つくりは良くないというようなことが多く言われていますが、私の考え方は逆で、冬場の気温が低い時は石鹸は作りにくいということなのです。短時間で油温が低下し化学反応が不足すると思っているからです。
そば屋とソーバーの書き込みは長かったです。疲れました。
では又。