「逆教育」 に 期待
先月7日に福島県飯舘村立飯舘中学校で実施した放射線被ばくとがんに関する出張授業では、講義の前後に、生徒にアンケートをお願いしました。今回は、その回答の変化を紹介したいと思います。
授業前、放射線の印象を聞いたところ、「怖い」が28%、「がんになる危険が高くなる」が57%でした。そして、広島・長崎でも遺伝などの影響は確認されていないにもかかわらず、全体で36%、女子では56%が「将来生まれてくる子どもに影響がある」と回答しました。 さまざまな形で耳に入る誤った情報で先入観が作られたのでしょう。生徒の気持ちを思うと、暗い気持ちになりました。
しかし、授業後のアンケートでは、「怖い」は18%、「子どもへの影響」は4%(女子はゼロ)に大きく下がりました。
一方、がんのイメージも授業の前後で変わりました。「治らない病気」は37%が4%に、「怖い病気」は44%が17%に、「痛い病気」は17%が3%に大きく低下しました。 逆に、「予防ができる病気」が13%から54%、「老化で増える病気」が22%から46%、「生活習慣が原因の一つ」は16%から53%に増えるなど、がんの正しい理解が進みました。
一方、村にたばこ農家が多いためか、父親が喫煙者の生徒が9割近くいました。実際、授業後に訪れた仮設住宅では、大半の男性がたばこを口にしていました。受動喫煙でも、発がんのリスクは100ミリシーベルト近い被ばくに相当します。狭い仮設住宅では、特に子どもへの影響が心配です。
授業後の生徒は、9割以上が「放射線被ばくについて家族と話をする」と答えました。被ばくを正しく理解することとともに、生活習慣の見直しについても、子どもから親への「逆教育」が期待できると感じました。
授業が終わった後、生徒代表の菅野大輝君(14)から、「いつも健康への不安があり、落ち込むこともあったが、安心して生活してよいと分かった。家に帰って家族に話し、知識を共有したい」とうれしい謝辞を頂きました。 (中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)