今回と次回はホームページ「診療案内」の「咳と痰の外来」に関係してのご説明です。

「咳と痰のガイドライン」も既刊が2019年ですので、直に改訂がなされると思われます。

既刊の「ガイドラインの構成」や「学術的な厳密さ」には必ずしも沿っていないかもしれませんが、当院での患者様からご相談の多い「咳と痰の治療」に関連して記載したいと思います。

この回では長引く咳や痰への問診と治療方針に関して説明します。

私が長引く咳や痰の訴えの患者様に会った際に想うイメージを以下に図示します。

 

主に患者様から訴えを伺う間は、以下の細気管支炎の断面図とA~Dの治療方針を考えます。時々質問もさせていただきます。

その後に私から問診をさせていただく際は、その下に書いたE~Jの「環境」「合併症」「感染」「経過」などを伺うことが多いです。

細気管支の断面図(Asthma Airway Model;監修 東京大学名誉教授/日本アレルギー協会 宮本昭正先生より一部を転用)

 

A.炎症によって気管支の壁が腫れる。⇒①吸入用ステロイド薬などの継続で腫れを軽減。

B.気管支平滑筋が締まり気管支内が狭くなる。⇒②β2刺激薬、③キサンチン誘導体、

④抗コリン薬などの併用で拡げる。

C.気管支内に痰が貯まる。⇒副鼻腔炎、鼻炎、咽頭炎、誤嚥の診断と治療

⇒細菌感染に抗菌剤、禁煙、COPDなどは④抗コリン薬で軽減。

D.アレルギーによるAが疑われる。⇒⑤LTRA、⑥抗H1R追加で症状を緩和。                

 (LTRA;ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗H1R;抗ヒスタミンH1受容体拮抗薬)

E.炎症を起こす環境要因、F.合併する炎症性疾患、G.呼吸器感染

H.炎症の部位・器質化(器質化とは固形化した病変になること)              

I.炎症の時間的経過、J.炎症の程度に影響する要素

炎症は「病理学」の概念です。「世の中で戦争や災害などで被害を受け、対応して闘うこと」と同様なことが、病気に対して身体の中でも起こるイメージです。身体の中では「人」ではなく「細胞」が主役です。

「長引く咳」が「炎症」とあまり関わりなく起こることもあると思います。

それはまた別途に考えるようにしています。