不定期になってしまい申し訳ございません。拙い文章ではありますが、読んでいただけたら作者冥利につきます。
では、どうぞ!平成最後、下らない小説で暇つぶしして下さい!

『無名都市のアル・アジフ』第1話【起源の悪夢】

10年前、地球に新たな支配者が現れ、人類を食物連鎖の頂点から引きずり下ろした!
人類、いや地球上に存在する全ての生命体を恐怖に陥れその存在を脅かした支配者達は畏怖と恐怖をこめて こう呼ばれる。
【邪悪なる異端の神々】(イーヴィル・デウス)と!

【イーヴィル・デウス】達はただ地球に降臨しただけでありとあらゆる存在を滅ぼした。そんな悪夢を乗り越えて存続した人類は身を守るためにある都市を建設した。それが 『無名都市』だ。
『無名都市』は18区からなる人工都市だ。
5区にある学園、『亞華夢(あかむ)学園』。
騒がしい昼の休み時間。黒髪に黒い瞳、平凡な容姿の少年は心地よい夢から醒めることになったのだった。少年を叩き起こした存在がいた。
少年を叩き起こした茶色い髪に青い瞳の少年が黒髪の少年に語りかける。
「おい、闇堂(あんどう)!起きろよ!」
闇堂と呼ばれた黒髪の少年は茶髪の少年に抗議する。
「寝てたのに起こすなよ鷹崎(たかさき)!」
鷹崎と呼ばれた茶髪の少年は闇堂の言葉にまるで耳を貸さず話を続ける。
「まぁまぁ、いいから。 闇堂、同じ部活の四部(しぶ)先輩の事どう思う?」
闇堂は少し動揺しながら答える。
「ど、どうも思わないよ!」
そう答える闇堂の顔はトマトよりも赤く火照っていた。顔から炎が吹き出そうなほどに。
そんな、やり取りをして昼の休み時間が終わる。
そして、時は放課後。
闇堂は喫茶部のミーティングに参加していた。
教室を貸し切って喫茶部のミーティングは行われていた。
闇堂の視線の先には、長く美しい黒髪に漆黒の瞳の少女が教壇に立ちミーティングを進めていた。
彼女は四部 仁愚利(しぶ にぐり)。喫茶部の部長を務める3年生だ。そして闇堂の異性としての憧れの人物でもある。
「・・・えーと、足りないのはコーヒーの豆と前、割れちゃったカップくらいね? この2つを明後日の放課後にでも買いに行きたいけど誰か買い物に付き合ってくれる人いない?」
四部が買い出しの提案をした。だが、誰も手を上げない。闇堂は手を上げたかったが、逡巡(しゅんじゅん)してしまう。闇堂が逡巡していると、四部がまた口を開く。
「誰もいないの?なら、私が決めます!指名された人は文句を言わず同行すること! そうね、うーん。・・・悪路(あくろ)君!闇堂君に同行してもらいましょう!・・・さっき、手を上げようとしてくれたみたいだし?」
そう言って四部は顔に向日葵の様な笑顔を咲かせた。
悪路、闇堂悪路(あんどう あくろ)に人生で2度とないチャンスが訪れた瞬間だった。悪路は満たされた気分になっていた。
これが悪夢へと誘う強烈な睡魔の様なものになるとも知らずに。
その翌日、悪路は遠足に行く小学生の様な気持ちで1日を終えた。1日がとても長く感じ、早く1日が終わらないかと思いながら授業を受け、翌日になるのを待ったのだった。
当日、昼の休み時間に悪路は鷹崎と話し合っていた。
「今日の放課後、四部先輩と買い出しに行くんだ!」
悪路が自慢げに言うと鷹崎は悔しがる。
「くぅーずりい俺もイキてぇー!」
鷹崎が大声を上げると注意する声が教室内から飛ぶ。
「静かにしろ!うるさいぞ闇堂。」
少々きつい言葉を放った人物は長く青い髪に青い瞳の少女だった。
彼女は悪路のクラスで風紀委員をしている、零堕 紅斗羅(れいだ くとら)。何かと悪路を目の敵にするのだ。
「闇堂、お前さ零堕に嫌われすぎじゃね?何したの?」
悪路は何もしていないと首を横に降るだけだ。
そんな、やり取りをして昼の休み時間が終わる。
 時は放課後。悪路は 校門前で四部と待ち合わせてコーヒー豆を買うためにスーパーに向かう。
その道すがら、四部はスーツに身を包んだ男性とぶつかってしまう。
その光景を見た悪路はスーツの男を注意しようとした。だが、四部にぶつかった男はどこかに消えてしまった後だった。
四部は笑って悪路をなだめた。
「いいの。良くある事よ?そんな事いちいち気にしてたらキリがないわ!行きましょう悪路君。そんな事忘れて。お買い物、いやデートは楽しくなくちゃね?」
数分後、スーパーのコーヒー豆のコーナーにて悪路と四部は眉根を寄せコーヒー豆を選んでいた。
「うーん、味わい深い深みのあるコク。テレビでやってた奴かー!そちらはどうですか?先輩?」
「スター・booksのコーヒー豆ね 。有名店だからこちらにすべきかしら?まぁ他の所も回ってみましょう!」
それから、4軒くらいスーパーを巡り、最初のスーパーでスター・booksの豆を購入しマグカップを購入するためホームセンターに向かう。
   ホームセンターにて、四部と悪路はマグカップを選んでいた。
「これ、可愛いわね?」
そう言って四部は犬や猫が描かれたマグカップを指差す。
悪路は四部の言葉に同意する。
「可愛いですね?」
だが、四部は何故かそれを買おうとはしなかった。
「これも良いけど、他の物や他の所も見てみましょう?」
それから、5、6軒くらいホームセンターを巡り4軒目の青い波模様が入ったマグカップを購入した。時刻は21時を回ってしまっていた。
そこで、四部と悪路は近くのファミリーレストランに入り夕食を摂ることにした。
四部は370円の(ミートソース)、悪路はコーヒーと(ほうれん草とベーコンのパスタ)を注文した。
悪路がフォークで巻いた麺を口に運ぼうとすると視線を感じ顔を上げる。
そこには四部の顔があった。見つめられていた気がして急に気恥ずかしくなる。
「な、何でもないのよ? えと、可愛らしい顔してるなぁって思って・・・」
四部は慌てて弁明してフォークでスパゲッティを巻いて口に運ぶ。
その動作もとても美しい。 育ちの良さが伺えた。
悪路はまるで夢の中にいるかの様な感覚を覚える。
(ああ、最高だな!今日が終わらなきゃいいのに!)
夕食を摂り、レストランを出ると、四部が悪路に話しかける。
「悪路君、学校まで一緒に戻って豆とかカップ置いて帰らない?」
「こんな時間にやってるんですか?」
四部は朗らかに笑い答える。
「分からないわ? やってなかったら私が寮の自室に持って帰るから」
『亞華夢学園』は寮があり、門限は22時と決まっている。

四部と悪路は学園を目指し歩いていた。悪路はここら辺の地理に弱く四部に誘われ学園に向かっていた。
悪路は四部が薄暗い路地に入って行くのを慌てて追いかける。
四部に追いつき、悪路は尋ねる。
「四部先輩、こっちであってるんですか?」
四部は穏やかに微笑みながら答える。
「あってるわ!もう、そろそろいいかしら?」
四部の不思議な発言に悪路は慌てて訊き返す。
「え?何がですか?」
悪路の問いを無視し、悪路に詰め寄り壁に追い詰め、逃げ場を無くす。四部は壁にドン、と手をつき悪路の耳元で囁く。
「貴方が私になるの! 私が貴方に成り代わるの!貴方と言う存在、概念が消滅し、私になるの!私と1つになるの!Exi値が0になる貴方には関係ない事ね?だって誰も貴方が産まれた事から覚えてない、産まれた事実さえ消えるんだから!」
興奮の絶頂にある四部が悪路の首を手を回そうとする。
その一瞬の隙に四部の手首にかかったスーパーの袋からコーヒー豆の袋を取り出して袋ごと四部の顔面に至近距離から投げつけ、四部が怯んだ隙に路地の奥へと逃走を開始する。
逃げながらも悪路は思考する。
(彼女の言ったことが分からない!まるで理解出来ない。ただ、何かがヤバイ!意味不明だが、彼女は普通じゃない。)
悪路は深夜の狭い裏路地を四部から逃げる様に
必死になって駆け抜けていた。
足を止めたら、死よりも惨い事になる。
そう分かっていたから、全力で疾走した。
突然、悪路の背後から不気味な、平穏な日常を冒涜する音がする。
ずろる・・・。ぞろる・・・。その音がだんだん近づいて来る。そして、ソレは悪路の背後に現れる。ソレは悪路より少し年上の少女に見えるナニカだった!
悪路は背後を振り返り、少女の姿をしたナニカを見つけると酷く怯えた表情をする。
「う、あ・・・」声も出なかった。悪路が先刻まで四部仁愚利と言う少女だったナニカを見て怯える理由、それは・・・。
ずろる・・・。ぞろる・・・。また、不快な音がする。それを発していたのは、少女の姿をしたナニカだった!少女の姿をしたナニカは歪(いびつ)
だった。服装は学校指定の制服だ。長く美しい黒髪に、漆黒の瞳(今は玩具を見つけた子供の様に爛々と輝いていた)。きめ細やかな肌に華奢な腕と足。ただ1つだけおかしな点があった。
それは、少女の姿をしたナニカいや、四部仁愚利 の額から、黒い角のようなものが生えている事だった。その角のようなものが壁に擦れ、不快な音を発しているのだ。
次の瞬間、黒い角のようなものが倍近い長さに伸びてムチの様にしなり、悪路の右足に絡みつく。
それは角などではなく、触手だった!
黒い触手に足を取られ、走っていた悪路は地面に全身を叩きつけられてしまう。
逃げようにも足を取られていては逃げられない。刻一刻と平穏な日常を冒涜するナニカが近づいて来る。
それは悪路を見下ろしてにこやかに見知った顔で話しかけてくる。
「貴方は今から消えるから私が何なのか教えてアゲル。私は、 貴方達人間が『イーヴィル・デウス』とか呼んでるまあ、分かりやすく言うと宇宙から来た神様ね?
現、地球の支配者って事! 私達の存在が大きすぎてバレるとまずいから貴方に成り代わって生き延びるの。地球に来た 目的は話せないわ。私の真名は シュブ・二グラス。さあ私と溶け合いましょう?」
四部、いやシュブ・二グラスは動けない悪路の首に手を回し、身体を密着させる。
「本当にここまで大変だったのよ?コーヒーの豆をトイレに捨てたり、マグカップを割って、後輩がやった様に見せかける細工をしたり。本当は誰でも良かったのよ。でも、貴方が生け贄になってくれるって言って本当に嬉しかったわ! デートは楽しかった?余生を心置きなく楽しめた? 悪路君、おやすみなさい。」
悪路の耳元で囁いていたシュブ・二グラスの身体が悪路の中に溶け込み融合して行く。
 「何で?わた、が、掴むはずだったのに、何でこんな、・・・。イャアアアアア」
悪路は朦朧とする意識の中で悲鳴の様な物を聞いた気がした。
(誰だ?まぁいいや。よく、人生の主人公は自分だ!なんて言うけど、俺には当てはまらないな。
だって、俺は自分の人生の没キャラだ! 没キャラは関われない、ただ見てるだけだ。 光なんかない、ただ暗い闇の中を彷徨うだけだ。終わりのない悪夢の中を彷徨う様に!)
そんな事を物思い、悪路の意識は闇の中へと沈んで行った。


不定期になりますがまた、2話投稿します。 読んで下さった方々に無限の感謝を! 拙い文章に 不定期になってしまいますが、どうぞよろしくお願いたします。