今回は電関モーターについての考察。

スロットカー黎明期、’60年代の一時、一世風靡したといっても過言でないくらい、電関モーターが流行った時期があったが、何よりアメ車=ストックカーとの関わりが大きい。

 

1964年に営業サーキットが始まったと思われるスロットカーだが、当時国内では、葉巻型のフォーミュラとグループ5,6,7相当のGTカーしかキットがなかった。それが1965年、重いがトルクが強い電関モーターを使い、アメ車=モノグラム、AMTやJOHANなど輸入モノの重量車に使われ始めた。

1965年はホンダがF1で初めて6位に入賞した年であり、日本のモータースポーツ隆盛期でもあったが、丁度その頃、アメ車の多くがモデルチェンジでコークボトルのような優美な曲線を持つようになっていて、アメリカ国内でもグループ7(後のCAN-AM)よりストックカーレースの方が人気もあり、日本でも🎥映画レッドライン7000が公開されたりして、スロットカーの世界でもストックカーが流行ることとなった。

 

当時は輸入プラボディに手作りシャーシだったストックカーは、65年から66年まで電関モーターを乗せたものがメジャーだったが、のちにハセガワやタミヤなどメーカーからキットが販売されるようになって消えてしまった。

その頃、私はタミヤや青柳金属(AYK)のシャーシやパーツをいろいろ組合せて楽しんでいたが、自身で電関モーター用シャーシを作ることはなく遠く憧れてただけだった。

暫くして家から近くだった魚籃坂下のカツミ模型店に、いざ、モーターを買って作るゾ!と訪ねた時には、もうスロットカー用はなく機関車専用のものしか販売していなかった。

(その数年後に店も閉店してしまい、今ではかっての店前の道路まで変わってしまっている..半世紀過ぎれば日本では当然のことか)

上の写真は左からカツミ、ケムトロンと銀座にあった天賞堂のもの。ちなみにベンチテストでは天賞堂製が一番パワフルで回転も上がるが、寸法も大きいのでスロットカーには使いづらい。

 

メジャーだったDV-18Eは、宮沢やモデルホビースからもほぼ同寸のMM-90、RB-150のコードで販売されていたが、ケムトロンもそっくりだ。

ケムトロンもMADE IN JAPAN、米国からの逆輸入。ぱっと見はカツミと同じ所で造られたのかと思えるが、よくみると別物と分かる。

 

先ずはコアについて記そう。ローターのコア積層数はカツミ24枚、ケムトロン25枚とほぼ同じだ。ところが、マグネット部のコアはカツミ25枚、ケムトロン30枚。巾寸法は同一なのにこれだけ違うのはコアの厚さが違うからだ。

マニアには薄いコアを重ねて成功したムラ製のローターを思い出す事だろうが、ローターに関しての違いはないので性能に大差ないと思われる。

つまり、カツミはケース側コアの枚数が、永久磁石による固定磁界ゆえ関係ないと判断したのではないか。

スロットカーにとっても車高、重心は低い方が良いので過大な天地寸法は不利になる。

上記C寸法は実測でカツミの天地寸法25㎜に対し、ケムトロンは24㎜とケムトロンが1㎜アドバンテージがあるかにみえるが、しかしブラシホルダーのネジ部が出っ張っており、25.4㎜になってしまう。

これに対し、カツミはネジを小型化し25.2㎜で収めている。まぁモディファイによってはケムトロンの方がポテンシャルあるように思えるが、ホルダーを削ったりしては穴貫通の恐れもあり加工できるか不明だ。

また出力軸側のネジ穴はどちらもある。一方ブラシ受側はケムトロンがねじ切り穴があるのに対し、カツミは穴がなく軸の周りにフェルトでメタルを押さえている。これは言うまでもなくメタルのオイル給油と飛散り防止と解釈できるが、両方に穴がある方が実践的で使い易いのは言うまでもない。(左がカツミ、右がケムトロン、ホルダーの大きさなど、違いが分かるだろうか?)

どちらもMADE IN JAPANとは言え、この細やかさ大らかさ、理想と実用の違いでジャパニーズとアメリカンを感じてしまう。

それはシャフトとメタルのクリアランスもそうで、悪く言えば(マブチ製と同じ位だが)ガタが分かり良く言えばフリクションが少なそうなケムトロンに対し、カツミのは指でつまんだ位では全くガタを感じない..誰もがその穴のキツさからオイルをさして使いたくなる位ピッチリしている。

 

さあ、シャーシ制作して 60sレーシングモデルカー復活! .,できたらいいな。