刑事やさぐれ派①
## 第26話「掛け声」

### 公園ー夕方

【場面】公園のベンチに座っている眞とポチ。眞はシャンプーのボトルを持っている。

眞(ナレーション):今日は久しぶりにポチのシャンプーをしようと思って、公園に来たんだ。でも、このシャンプー、人間用だから、犬には刺激が強すぎるかもしれないな。昔は、シャンプーなんてなかったんだろうな。洗髪の事情が今とは全く異なっていた時代背景が、「かゆいところはありませんか」というおなじみの声かけにつながっているんだって。洗い残しがないかどうか、シャンプーの刺激がないかどうか、気にかけてくれる人がいるって、ありがたいことだよな。

ポチ(吠える):ワンワン!

眞(驚く):うわっ、ポチ、どうしたの?

【場面】公園の入り口に警察の同僚と娘さやかが現れる。

同僚(大声で):眞さん、かゆいところはありませんか!

さやか(笑う):パパ、おじさん、やめてよ。恥ずかしいじゃない。

眞(苦笑い):ああ、これがかゆいところはありませんかってやつか。ありがとう、気持ちはうれしいけど、ちょっと大きすぎるよ。

同僚(近づく):いやいや、これくらいしないと、あなたのやさぐれっぷりには勝てないんだよ。ほら、ポチも喜んでるじゃないか。

ポチ(尻尾を振る):ワンワン!

さやか(眞に抱きつく):パパ、お仕事お疲れ様。今日はバレー部の練習がなかったから、おじさんに連れてきてもらったの。

眞(さやかに頭をなでる):そうか、ありがとう。さやかは元気か?

さやか(にっこり):うん、元気だよ。パパも元気?

眞(ため息):うん、まあね。でも、最近、事件が多くて、忙しいんだ。特に、あの外国人の居候がね、色々とトラブルを起こしてさ。

同僚(うなずく):ああ、あの人は本当に手に負えないよな。山手中央署の障がい者警察官として、彼の保護を任されたけど、なかなかコミュニケーションがとれないし、ルールも守らないし、何を考えているのかわからないよ。

眞(苦笑い):そうなんだよ。ユウという名前らしいけど、本名も国籍も不明だし、言葉もほとんど話せないし、路上生活者だったから、家の中で暮らすのも慣れてないんだろうな。でも、ポチは彼が好きみたいでね、一緒に遊んだり寝たりしてるんだ。

ポチ(ユウの名前を聞いて吠える):ワンワン!

さやか(ポチに話しかける):ポチ、ユウさんのこと好きなの?私も好きだよ。ユウさんは優しいし、面白いし、いろんな国の話をしてくれるんだよ。

同僚(驚く):え、ユウさんは話せるの?

さやか(うなずく):うん、少しだけど。私は英語が得意だから、ユウさんと英語で話すんだ。ユウさんは英語と、ほかにも何かの言語を話せるみたいだけど、私にはわからないや。

眞(感心する):へえ、さすがさやかは頭がいいな。私は英語も苦手だし、ユウとはジェスチャーでしかやりとりできないよ。でも、ユウは何で日本に来たんだろうね。何か秘密があるのかな。

同僚(首をかしげる):そうだね、謎が多いよね。でも、あまり詮索しない方がいいかもしれないよ。もしかしたら、危険なことに巻き込まれるかもしれないからね。

眞(考え込む):そうかな。でも、私はユウを助けたいんだ。彼は私にとって、家族の一員なんだから。

さやか(眞に笑顔で):パパ、そう言ってくれてありがとう。私もユウさんを家族だと思ってるよ。パパは本当に優しいね。

眞(さやかに笑顔で):ありがとう、さやか。君は本当にかわいいね。

ポチ(眞とさやかに尻尾を振る):ワンワン!

【場面】公園の遊具に遊んでいる子供たちの声が聞こえる。

子供たち(掛け声で):わっしょい、わっしょい!

眞(ナレーション):『わっしょい』が我背負えが訛ってわっしょえだろうって、ゲンさんが言ってたな。ゲンさんは刑事の先輩で、いろんな知識を持ってるんだ。昔の人々が自然災害や疫病や飢餓などの不幸な出来事の原因を「邪気(鬼)の仕業」にしていたところもあったらしい。だから、祭りのときには、鬼を追い払うために、わっしょいと掛け声をかけて、力を合わせて山車を引いたんだって。今でも、その伝統は残ってるんだね。東京都台東区・浅草寺は「千秋万歳 福は内」という掛け声で有名だよな。「千秋万歳」とは長寿を願う意味で使われる言葉だったりも言う。人間は、いろな言葉を生み出して、いろんな意味を伝えてきたんだな。言葉は、人間の歴史そのものなんだな。

同僚(

 

神輿を背負う掛け声が鬼を追い払うために、わっしょいという習慣はありません

これも一種のバグでしょうね