日本人留学生けんじの裏切り
「サンとケンジの英語はそっくりだな!」
いきなりの告白ですが、私は女の人に髪を触られるのも、
男の人に髪を触られるのも大嫌いです。
どういうことか?
カナダ留学時代、クラスメートだった韓国人留学生「サン」と仲良くなった。
彼はとても愉快な男で、
授業中に自分の鍛えた筋肉を触りニヤニヤしている習性があった。
いつの日か、私たちは挨拶代わりに、お互いの筋肉を触りあうようになった。
韓国人の男の人はスキンシップを非常に好む事を知っていたので
私も彼らに近くなりたい想いで真似事のような事をしていた。
ある意味変態な二人だが、ボディータッチが二人の仲を急速に深めたのは間違いない。
彼は毎日体を鍛えたので立派な筋肉を身につけていたが、
私はどちらかというと筋肉というより立派な脂肪を蓄えていた。
そんな彼は私の脂肪を馬鹿にしていたが、
私の髪だけはサラサラだといって誉めてくれた。
そしていつからか、彼は私の髪を毎日触るようになった。
朝ご飯を食べながら、毎日のように。
彼は私のことを気に入ってくれ、私も彼が大好きだった。
私が韓国人の女性に恋をしたときも、
彼は必死になって仲をとりもってくれた。
韓国語でラブレターを書きたいという私をサンは手伝ってくれた。
ある日彼は私と一緒に住みたいと言って、
当時私が住んでいたホームステイ先に引っ越してきた。
そして、学校に行くのも一緒、授業も一緒、遊びも一緒、帰宅も一緒、
何から何までずっと一緒の生活になった。
そんな二人がいつものように仲良く授業を受けている時だった。
先生が「サンとケンジ(私)の英語はそっくりだな!」
といって大笑いした。
あるクラスメートは
「けんじの英語がだんだんサンに似てきている!
初めて会った時はそんなんじゃなかった!」
といって大笑いし、サンも一緒になって笑っていた。
ただ私は笑えなかった。
すっごくショックだった。
サンはクラスでも英語ができない代表として
先生が何回も彼の英語を注意していて、
クラスメートからも少々馬鹿にされていた。
そのサンと自分がそっくりだと言われて、
今までの留学生活が全て無駄のように思えてしまった。
楽しかった時間を忘れて・・・。
私とサンはクラス替えをきっかけに、
少し一緒にいる時間が減った。
そしてなるべくサン以外の人との交流の時間を増やすようにした。
ホームステイ先だけが私たちの会話の時間となった。
それでも話していると、先生やクラスメートの言葉が気になってきて
私はサンと楽しく話せなくなっていた。
「サンとケンジ(私)の英語はそっくりだな!」
私はサンに嘘の理由を話して、まもなくホームステイをでた。
それから私はサンと自然に話さないようになっていった。
まだ電話をもっていないといって、連絡先も教えなかった。
私が語学学校を終了し、カレッジに通いだしてまもなく、
サンのことが気になってホームステイ先に電話した。
その時知ったのは、サンが予定を早めて韓国に帰国したというニュースだった。
ホームステイマザーは、こんな話もしてくれた。
「ケンジが出て行ってから、サンは帰宅していつも、
ケンジから電話がなかったか聞いていたわよ」
私は留学して初めて泣いた。
なんてことしたんだろ・・・。
私とサンは今も連絡をとれていない。
彼が今どんな想いで生きているのか想像すると苦しくなる。
けんじに裏切られたと思って、今も憎しみの心でいやしないか。
私は韓国に行くと、彼に偶然出会えないかいつもソワソワしている。
正直言って怖い。
でも会いたい。
殴ってもらって、許してもらおう。
そんな事ばかり考えてしまう。
美容院に行くと、必ず髪の毛を触られる。
その時にいつも思い出すのは、
サンが私の髪を触りながら、ニヤニヤしている顔だ。