ここしばらく乗馬のリスクについて書いていましたので、今度は馬が持つ癒しパワーについて何回かに分けて書いてみようと思います。



もう何年も前に、The Horse Boyという米国在住の英国人が書いたエッセイを買いました。たまたま洋書売り場をうろうろしていて見つけた本だと思います。正直、どこでどのようにしてこの本を知ったのか、全く覚えてません。そしてそのまま読むことなく本棚で眠っていました。2010年のDressage Today2月号に、著者の書いた記事が載りました。「あの本の人だ!!」すぐにわかりました。記事はなかなか心に響かず、そのため著作も読むことはなく月日は過ぎて行きました。


こちらに来て1か月、手持ちの本を読みつくし、東京からの引越し荷物のダンボール箱を漁りました。私たち夫婦は大量の本を持っていて、本の入ったダンボールというのがものすごく多いです。おめあての本を見つけ出すのは至難の技。そんな中、私の本としては真っ先にThe Horse Boyが出てきたのです。たまたま昨年の夏はkiriさんがmokoさんと一緒にモンゴルへ馬旅に行っており、モンゴルと馬は記憶に鮮やかでしたので一気に読み進め、この親子の旅の世界にすんなり入って行くことができました。急いでDressage Todayも執念で探し出し、記事を読みました。




私はこれまでに幾度となく馬に救われてきました。脳に障害を負ってからは馬が与えてくれる不思議な癒しの力というのをいっそう実感しています。ですから、彼の書いた本や記事を読んで共感するところが沢山ありました。


私はドキュメンタリーはまだ見ていませんが、見たいと思っています。






また、ルパートさんは自閉症である動物学者のテンプル・グランディンさんと会談もしておられます。テンプルさんの本は何冊か邦訳が出ていますのでご存知の方もおられるでしょう?


日本では左のは動物感覚、右のは動物が幸せを感じるときとなっています。表紙も違うと思います。後者は残念ながら邦訳の際に馬の部分が除外されたそうですね(小説ではないので、正しい知識を得るためにいずれどちらも邦訳で読んでみたいとは思っています)。


彼女がルパートさんの背中を押したとも言えるかもしれません。クレイジーな考えに、葛藤していたからです。自身は強く信じていながらも、もしも息子が拒絶したら?それ以前に本当に息子と海を渡れるのか?といった疑問が重くのしかかっていたのです。モンゴルまで行って、シャーマンの癒しの儀式を受ける旅を馬に乗って続ける。失敗したら一家の生活はどうなるのか?最初は奥さんは猛反対だったそうです。しかし撮影隊として参加したカメラと音響のプロである友人たちとともに一家はモンゴルの大地を馬に乗って旅するのです。

そして、西洋医学ではどうすることもできなかった息子さんの自閉症は、旅が終わる頃には見違えるほど良くなっていて、息子さんは劇的な成長をしたのでした。意味のある文章での会話のキャッチボールができるようになり、人生初の人間の友達を得、我慢と妥協を学び、不可能と言われたトイレトレーニングもコンプリート。当初は父親の心配が本当のことになったかのように、少年は頑なに乗馬することを拒み、とある工程はほぼ全部、サポートのバンに母親と乗って移動、父親が馬で別行動というようなこともあったりと、決して平たんな旅ではありませんでした。それでも旅の初めに受けたシャーマンの儀式、ガイドが同伴したガイドの息子さんと仲良くなったことなど通し、少しずつ風向きが変わっていくのでした。

旅は、はじめにモンゴル各地方から事前にアレンジしてあったジャーマンたちが集結、それぞれの部族に伝わる儀式で癒しのわざを行います。その後、一家はシベリア方面へトナカイと暮らす部族を探しながら移動(遊牧民なので、ハッキリどこにいるかわからない)。道中、ルパートさんが最初にネットで色々探していたときに現れたのに、イザ旅を決行しようと準備した頃にはネット上から消え失せていた癒しの湖も、旅の行程で各地で人々に聞きながら探し、寄ります。最後に出会ったシャーマンからいずれこの子は治る(というか社会に適応できるようになる)と言われ、ウランバートルに戻る旅の中で早くも変化を見せた少年。


私たちの多くが忘れた自然が持つ癒しの力というのは、何か私たちの理解を超えたものがあると感じます。科学が切り捨ててきたことの中には、科学的説明ができなくとも確実に何かある、というものもあるはずで、ただ、それを見極めるというのは難しく、簡単にはいかないと思います(人の心理というのも関与するはずです)。それでもモンゴルの大地のような、自然と人が未だ共存して暮らせているところでは大きな力を持っているのかもしれません(多分、人が自然に対して謙虚なのだろう)。私にはシャーマニズムはよくわからないけれど、、、。


馬のプロの顔を持つ旅行作家のルパートさんは、社会活動家でもありアフリカのブッシュマンと結びつきがあります。そのためシャーマニズムとの接点がありました。自閉症の息子さんが、ある馬と瞬時に強い結びつきを見せたこと、治療のためあらゆる医学を試みたがことごとく上手くいかなかったことから、息子さんのためにヒーリングと馬を結びつけたらどうなるのか?それが可能な場所はあるのか?そう考えた時に、モンゴルが浮かんだのでした。


ホースパワーもそうですけれど、何より私はこの方の意思の強さと行動力にに感服しました。もちろん、背景には彼の職種による知識やネットワークも多少なりともあったことでしょう。それでも、だからと言って誰でもできるというようなことではありません。彼はこの経験から、米国に帰国後、自閉症の子供たちのための治療的乗馬施設をオープン、今はボランティア養成も含む他の活動も加え、自閉症の子供たちとその両親、ボランティアの学習センターのような施設になっています。