音楽にすべてを捧げつくす、という思いの強さ。



スクリャービンに思いを馳せるとき、常に筆者の年頭にはそれが浮かびます。


 稀代のヴィルトゥオーソとしての名誉欲と熾烈な闘争心によって右手を故障し、ピアニストとしての挫折感から一層作曲に打ち込んだ若きスクリャービン。


 ニーチェへの心酔から晩年の神秘主義的な陶酔、ブラヴァツキーへの傾倒。


 ほとんど常軌を逸しているとしか思えない彼の生涯において常に一貫していたものをただ一つ挙げるならば、それはやはり音楽に対する思いの強さということになるでしょう。


 たとえ悪魔に魂を売り渡そうとも、芸術的なエクスタシーに達しようとする強烈な衝動。



 ラフマニノフやプロコフィエフも大作曲家ではあるに違いありませんが、この点においてはスクリャービンには一歩譲ると言って良いのではないでしょうか。



 そしてそんな彼の作品の中でもとりわけ筆者が愛している作品の一つが彼が若き日に書いた唯一のピアノコンチェルト♪


 あらゆる欲望にまみれながらも音楽に対してすべてを賭けるという限界状況のなかで生まれてくるスクリャービンならではの「歌」で溢れているすばらしい作品です。




(簡潔ながら、非常にカッコいい第一楽章♪)



(この第二楽章はあまりにも甘美で力強い♪)



(第三楽章のクライマックスは感動以外の何ものでもありません。)



この作品は現在あまり演奏される機会がありませんが、決してラフマニノフやチャイコフスキーの名作のそれに劣るものではありません。



コンクールなどでもこの作品が採り上げられ、若い情熱的な演奏が聴かれるように是非なってほしいと思います。


20世紀前半の時代思潮に敏感でありながら、常に「マキシマム」を求め続けたスクリャービン。彼の音楽の原点に改めて耳を傾けたいと思います。




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