「古典と現代 ~田嶋直士 尺八の世界~」に行ってきました♪



 世界的なリコーダー奏者の鈴木俊哉さんをゲストにお迎えしてのリサイタル、ということで、「和と洋」という観点からも堪能できるとても感慨深い演奏会でした。



 全体的な印象から言うと、尺八の奥深い魅力とリコーダーの表現の可能性に驚かされ、しかも両者の何とも言えぬ一体感にとても安らぎました。




 とりわけ、木下正道さん作曲「水の記憶を失った海の子供たち」では静謐な田嶋さんの尺八と鈴木さんの躍動するリコーダーのダイナミズムの対比が印象的。そして、クライマックスにおいて互いに息を重ね合いつつ再度ドラマを回想して迎える沈黙の時はとても感動的でした。



 尺八曲の代表作の一つ『鹿の遠音』においても、今回は尺八とリコーダーによって演奏されたため、リコーダーによる「尺八」パートの表現はきわめて「動」的な印象。それでいながら、一つの音楽がナチュラルに織り上げられる情景は甘美としか言いようがありません。



 前半の尺八による福田和夫「MEI」とシャリーノのリコーダー作品「風によって運ばれた対蹠点からの手紙」のコントラストも素晴らしく、後半の尺八ソロに収斂して行くプログラム構成も見事でした。



 尺八という楽器が背景として持つ自然との一体性や瞑想感はもしかすると現代では実感しにくい失われた情感であるのかもしれません。しかし、その本来の魅力がリコーダーとの対比において現代に呼び覚まされているようで、非常に興味深かったです。鈴木さんという最高の名手がゲストであったためでしょうか、かえって田嶋さんの「静」の重みが引き立てられ、田嶋さんの「静」あっての鈴木さん「動」という印象を強くし、尺八の持つ底知れぬ美しさに打たれました。



 秋の黄昏に誘われつつ、何かを求めてどこかに出かけていきたいという、、、そんな気持ちにさせられるような素晴らしい演奏会でした。



 行ってよかったです☆