祖母が退院してきたので、会いに行ってきた。


病院にいると病人みたいだった祖母も、自分のベッドではいきいきとはっきりしていて、ちゃんとした祖母だったのでホッとする。


大きな窓からは大きなもみじが見えて、若い葉は赤く色づき夏に向けて次々にみずみずしい緑に変化している。小さな枝からは、まだ色が変わっていないままの赤いもみじが見えた。

「あの赤い紅葉、きっとおばあちゃんにみせようと思って赤いままだったのよ」祖母が言う。


冷蔵庫にチョコレートがあったので、ひとつむいて食べた。「どれ、おばあちゃんもひとくち」私をみて珍しく祖母が言ったので、小さなひとつを半分こした。口の中にひろがる、甘いチョコレートの香り。私はとても幸せだった。祖母はにこにこしている。


「お前、どうしていつも小さな男の子を連れているの?」


びっくりしてチョコレートをむせた。私に男の子などいない。


「いつもお前の後ろにくっついて、最近産んだの?」


祖母は目がマジだ。


「いないよ、男の子は」


祖母は不思議そうに首をかしげ、不服そうに「ふううん」と言った。


病室にいたときは足元にねこがくるとか小さな虫がいるとか、いろいろ言っていたけれどこればっかりはウンというわけにはいかない。混乱するから。

「きっと、夢をみたんだね。へんな夢」私が笑うと、「うん、たまにごっちゃになっちゃってそうか夢かぁ」と祖母も笑った。


帰るとき、ハイタッチした。祖母の手はいつもすこし冷たくてすべすべしている。ふくよかだった腕は、すっかり脂肪が落ちていた。


「またくるね、またね」祖母は何もいわずうんうんと頷いた。


さあ、またがんばらなければ。祖母に会うたびに、強く思う。


がんばらなければ。