久しぶりに海の夢を見た。
私は海と結婚していて、一緒に夕餉を楽しんでいた。
海はいつもにまして楽しそうで、そして私はその笑顔を見るたびに反対に落ち込んでいる。帰りたい、と思った。
結婚しているのに、ここじゃないどこかへ帰りたい、と。私の場所はここじゃない。
海はどんどん笑顔になっていく。この人を傷つけたくない。でも、自分に嘘をつくことはもっとこの人を傷つけることになるんだろう。
私は大きく息を吐いて、海のほうへ向いた。
全てを話した後、海は寂しそうに笑った。
「知ってるよ」
朝起きたとき、とてもほっとした。帰ってきた、と。
しばらく呼吸が整うのを待って、ベッドから降りた。猫が短く鳴く。
ヒデさんと結婚して12年も経つのに、海と結婚している夢をみた。
海は元気でいるんだろうか。風が強く吹くあの街で、誰かを全力で愛しているのだろうか。そうであったらいい。本当に、そうであればいい。
ベッドに戻ってタオルケットにくるまったら、規則正しい寝息が聞こえてきた。
今度は現実の夢がみられますように。
呼吸に合わせて、もう一度眠りのはしっこをつかまえようと目を閉じた。