いつも夜見る夢は、必ずカラー。

彼との恋を失くした日の夢には、赤だけ欠けていた。

ただの一色なのに、総スクリーンが 暗く見えた。


あたたかさが なくて

ただ ただ 泣けてきた。


今になって 。

どんなにケンカしようが、気まずくなろうが、

心の根っこに温かさを与えてくれていた人だったんだ。と思った。


私にとっては、そこにいてくれるだけで

気持ちの軌道修正をしてもらってたのかもなぁ。


首筋に顔を押し付けるように引き寄せる彼のクセがお気に入りで、私は彼の匂いが好きだった。

ほっとする。

キスをする前のためらいの間がお互いの気持ちを丸裸にする。

理屈なく、本能だけが相手を掴まえる。


・・

そうそう、つづきの初デートの話を。



7年だった。


細い糸が長く繋がったような関係。

彼は、私の望むものを何でも持っていて 出会った時から憧れていた。



21のある秋の夜。

その日は珍しく、仕事後に友達とお茶をしようという事になった。

Sビルのカフェは駅脇ロータリーを挟んだところにあった。



ホッとしてお茶をしながらおしゃべりをしていた。

と、突然の停電。



店員も予定外の事にあたふた。私たちは打つ手も無く紅茶を飲みながら、戻るのを待っていた。


どうやら4階建てのビルは全フロア停電で、20分しても一向に戻る気配無く、結局店を出る事にした。

なんだか物足りなくて、そのままロータリーのベンチに座る。



すると、私のちょうど右側から声を掛けてくる人がいて

私は知らないフリをした。

なのに、友達がそれに気付いて返事をする。私は警戒しながら彼を見た。



秋の夜は暗くて、オレンジ色の街燈の光ではよく見えない上、彼はライトを背にしていた。

友達がカッコイイとやたらと褒める。

よく見えないのだけれど背高くてモデルのようなシルエットが見てとれた。



私の周りにはいない大人の人だナァ、と。

暗がりでもなんとなく眩しかった。

慣れてそう・・。なんでこんな人が声を掛けてくるのだろう。それも一人で。

勧誘だろうか。


どうやら同じビルで飲んでいたら、停電になって出てきたらしく、いくつも年上だった。

飲みに行かない?

断わると、ケータイナンバーを教えて欲しい言う。

なんだか胡散臭った。

ケータイみせてくれる?私は言ってみた。

彼は抵抗も無く私に手渡す。

・・・。

警戒もせず、安易に触らせてくれた事が私の緊張を解く。

悪い人では ないのかもしれない。


「この人と友達になったら、私は物凄く変わる。」と思った。

直感、だった。強烈に変われる、と感じた。

彼がまず友達にナンバーを聞き同じく私に聞いてきた。

友達狙いなんだなぁ。私は冷静になる。


その時期、会社の人間関係がうまくいっていなかった私は

変化する事を求めていた。


私狙いじゃいなら友達になれるかもしれない。むしろ

・・遊ばれるかも、男なんてそんなもの。

けど何か刺激が欲しかった。

どうにかなれ。どうにでもなってしまえ。


私は別れ際 彼とナンバーを教えあった。

それが彼との出会い。

軽い彼と堅い私。

人は無いものを欲するという。



恋愛経験多そうな彼と、恋愛未熟な私。

背の高い彼と、背の低い私。

補おうという本能。



年上の大人の彼と、年下の子どもの私。

老け顔の彼と、童顔の私。

焦がれるという事は、自分にとって成長したいという前向きな衝動。



理屈なんて無いの。

純粋に思ったんだ。

あの純粋さは 今も誇らしく思う。

もう なくしてしまった恋だけど、今も時々胸が痛む。