小野寺史宜さんの小説『ライフ』は、人と人との繋がりが希薄になりがちな現代において、あたたかな人間関係の構築を描いた作品でした。主人公の井川幹太(いがわかんた)は27歳。大学卒業後、会社勤めがうまくいかず、現在はアルバイトを掛け持ちしながら1Kのアパートで一人暮らしをしています。なるべく人と深く関わらず、気ままに生きていければいいと考えていました。そんな彼の平穏なアパート暮らしは、上階に引っ越してきた「戸田さん」こと戸田愛斗(とだあいと)とその家族(妻子と別居中だが、子供たちが頻繁に訪れる)との出会いをきっかけに大きく変化していきます。戸田さんは、良く言えばおおらかで人懐っこい、悪く言えばがさつで遠慮のない人物で、夫婦喧嘩や子育ての悩みなど、プライベートなことまで幹太に明け透けに話してきます。最初は戸惑い、できるだけ距離を置こうとする幹太でしたが、いつの間にか戸田家の人々から頼りにされるようになります。戸田さんとの交流をきっかけに、幹太はアパートの他の住人や、アルバイト先で再会した高校の同級生など、様々な人と関わるようになっていきます。人との関わりを避けてきた幹太にとって、彼らの存在は時に面倒に感じられながらも、徐々に心地よいものとなっていきます。物語が進むにつれて、幹太は自分の心の中にずっと押し殺してきた「願い」に気づいていきます。それは、かつて人間関係でつまずき、人付き合いに対して冷めた気持ちを抱いていた彼が、再び人と深く関わり、支え合って生きていくことの尊さを見出していく過程でもあります。誰にも頼らず一人で生きられればいいと思っていた青年が、不器用ながらも周囲の人々と心を通わせ、温かい絆を育みながら新たな一歩を踏み出すまでを描いた、心温まる青春小説でした。

 

ゲンタ😃