ラステルに巨神兵……謎が満載のアニメ映画『風の谷のナウシカ』

 1984年に公開されたアニメ映画『風の谷のナウシカ』には、劇中で詳しい説明がされていない謎めいたシーンや描写がいくつか存在します。そのため、子どもの頃に観たときによく意味がわからなかった場面も、大人になってから見返すと「なんとなくわかる」というケースもあることでしょう。

 

  【画像】『ナウシカ』の謎シーンの真実! 大人になってからチェックしたい場面も(4枚)

 

 そこで、今回は子どもの頃はわからなかったアニメ『風の谷のナウシカ』の「不思議な場面の意味」について解説します。

 

 まずは、映画の序盤に登場する「ラステル」という少女にまつわるシーンです。ラステルは、トルメキア王国の飛行船が蟲に襲われて墜落した際に、ナウシカと出会った少女でした。その正体はペジテの王子であるアスベルの妹で、ラステルは死の間際、ナウシカに「積み荷を燃やして」と意味深な言葉をかけました。

 この場面で、ナウシカは息も絶え絶えのラステルの服をはだけさせます。そしてラステルの胸元を見たナウシカは複雑な表情を浮かべて服を元に戻し、なんの行動も起こしませんでした。この映画の描写だけでは、ナウシカが何を見たのか、はっきりしません。

 実はこのシーンについて、宮崎駿監督自身が『風の谷のナウシカ ロマンアルバム』のなかで触れています。そこで監督は「胸が押しつぶされてるんです」と語り、ラステルの身体は既に手の施しようがない状態だったことを示唆しています。

 本来であれば出血を描写するところですが、宮崎駿監督はアニメで血の跡が汚く動いてしまうことを避けて、あえて血を描かなかったそうで、「ちょっと、わかりにくい場面になっちゃったんですよね」と語っていました。

 さらに物語の終盤の巨神兵が腐った姿で登場したシーンを見て、衝撃を受けた人もいるかもしれません。しかし、当時の子どもの目線だと「巨神兵がなぜ腐っていたのかよくわからなかった」という方も多いのではないでしょうか。

 映画『風の谷のナウシカ』では、巨神兵が初登場した際、卵膜のようなものに包まれていました。そして宮崎駿監督が描いた原作マンガには、巨神兵が胎動するシーンや「巨神兵は人間の赤子と同じ」と言われているシーンなどがあります。

 それにアニメの描写を合わせると、巨神兵を誕生させたものの成長に必要な時間が足りておらず、未成熟のまま復活させられたことで、あのような腐った姿になってしまったのだとわかります。

 腐った巨神兵を目にしたトルメキア軍のクロトワが「早すぎたんだ」と呟いた背景には、そういう理由があったのです。

 

複雑な間柄だった? クシャナとクロトワの本当の関係

 最後は、トルメキア軍の将軍(原作マンガでは王女)クシャナの副官であるクロトワについてです。

 クロトワは映画のなかで、本心がわからない男として描かれています。普段はとぼけた感じを装っているものの、クシャナが行方不明になったときには「やっとめぐってきた幸運か?」などと呟いており、心からクシャナに忠誠を誓っているわけではなさそうでした。

 そんなふたりの関係性は、アニメを観ただけだと「よくわからない」と感じるのは無理もありません。実は、原作マンガのクロトワには「クシャナを監視し、抹殺することを命じられた刺客だった」という設定があるのです。

 原作マンガのほうで登場するクシャナの父・ヴ王は、正統な血筋であるクシャナを脅威に感じ、粛清しようと策謀を巡らせます。そのための刺客として送りこんだのがクロトワでした。しかし、クロトワはその命令を遂行したとしても、口封じに殺されることを予想していました。そこで自分の正体をクシャナに見破られたあとは、ヴ王を裏切ってクシャナに寝返ります。

 アニメのなかで、クシャナとクロトワは主君と家来という関係性ながら、何やら複雑な事情がありそうに見えたのは、このような原作マンガの設定が影響したのかもしれません。

 長編の原作をアニメ映画に落としこむ以上、すべてを事細かに描写するのは不可能です。もし、ほかにも気になったシーンやわからないシーンなどがあった方は、『風の谷のナウシカ』の原作マンガを読んでみると解決するかもしれませんね。

【関連記事】