「テレビゲーム」は子どもがやるものと思われがちですが、書籍や映画ともまた違う独自のシリアスな、あるいはユニークな作品が多数あります。その魅力は奥深く、大人の趣味として楽しめるほどに成熟しているといっても過言ではありません。

 そこで、この連載では、ゲームの評論やコラムを10年以上書き続けているゲームライター、いわばゲームを遊ぶプロである渡邉卓也氏が、ゲーマーからは人気でも一般的にはあまり知られていないであろう著名な作品や傑作を紹介します。

 

  【画像で見る】懐かしい「スーパーマリオランド2 6つの金貨」のプレー画面

 

第29回は、ゲームボーイ好きの大切な思い出となっている作品『スーパーマリオランド2 6つの金貨』を取り上げます。

 

 ■今のマリオに続くさまざまな要素が登場

 

  2023年2月より、Nintendo Switchでゲームボーイの作品が遊べるようになりました。ゲームボーイが発売されたのは1989年であり、いまから約34年も前のこと。もはやすっかりレトロゲームですね。

 

 Nintendo Switchで遊べるゲームボーイの作品はいくつか存在するのですが、そのなかでとくに取り上げたいのが『スーパーマリオランド2 6つの金貨』です。

 いまでこそNintendo Switchのような「携帯できるゲーム機で、家庭用の据え置き型と同じゲームが遊べる」なんて代物が出ていますが、当時はまだ携帯機と据え置き機が明確に分かれている状態でした。

 

 1989年にゲームボーイと同時発売された『スーパーマリオランド』は、任天堂が開発しているのに、ファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』から明らかに劣る部分が気になってしまうのも否定できませんでした。

 

 マリオをはじめキャラクターは小さく描写されていますし、マリオが投げるのはファイアボールではなくスーパーボールだったのです(とはいえ、こちらも思い出深いゲームですね)。

 それから3年後に発売された『スーパーマリオランド2 6つの金貨』は、同じゲームボーイでも大きく進歩していましたし、今のマリオに続くさまざまな要素が登場していたのです。

 

 『スーパーマリオランド2 6つの金貨』は1992年に発売されました。前作と異なり、キャラクターは大きく描写されるうえ、ステージ選択画面もあり、上下左右に画面がスクロールするようにもなっています。

 

 ゲームのジャンルとしては、(今からすると)かなりシンプルな2Dアクションゲームです。ゴールを目指して敵を踏んだり避けたりして、先へと進んでいくものですね。

 

 物語の舞台は、なんとマリオが所有している「マリオランド」。ここにはマリオの形をした大きなアトラクションが作られているほか、挙句の果てに「マリオ城」なんてものまであるというのです。このあたりの設定も昔ならでは、といったところで、かなり自由奔放ですね。

 

■主要キャラクターの「ワリオ」が初登場

 さらにそんなマリオランドは、どこかマリオに似た(? )「ワリオ」という人物に乗っ取られてしまいます。

 おまけにワリオはこのあとシリーズすら乗っ取ってしまい、『スーパーマリオランド3 ワリオランド』では主役を務めています。いまや任天堂のキャラクターの1人となっているワリオは、この作品が初登場でした。

 ちなみに、本作のマリオはニンジンを取ると「バニーマリオ」に変身し、耳が生えてゆっくり滑空できるようになります。

 今もマリオはネコやオバケに変身して多くの人を驚かせていますが、このころから突飛な変身をしていたんですね。

 

 若い人がいま『スーパーマリオランド2 6つの金貨』を遊ぶと、あまり変哲のないゲームだと思うかもしれません。しかしながら、前述のようにリアルタイムでは大きな進化が感じられる作品でした。

 

 お化け屋敷のような「パンプキンゾーン」というステージもあれば、大きなクジラの体内に入って冒険する、あるいはカバの鼻水に入って宇宙を目指すなんてこともありました。ゲームボーイながら、いろいろな世界に触れられたのはとても印象的でした。

■隠しゴールやミニゲームも

 隠しゴールも存在しており、それを見つけるのに躍起になったプレイヤーも多いでしょう。ミニゲームのスロットを遊ぶこともでき、それを遊びたいがためにコインを必死になって集めた人も少なくないはず。

 BGMや効果音も非常にキャッチーで、いまなお忘れられないほどです。当時、ゲームボーイで『スーパーマリオランド2 6つの金貨』を遊んだ人は、それこそ記憶に刻まれるほど本作を楽しんだのではないでしょうか。

 

 かくいう私も、幼いころ本作をしゃぶりつくした1人でした。改めてNintendo Switchで本作を遊んでみると、ノスタルジーがひたすらにあふれてきて、得も言われぬ感情に襲われます。テレビゲームに対してそのような気持ちを持つ時代が来たのだな、としみじみと思います。

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