本日5月27日は、36年前にファミコン用ソフト『ドラゴンクエスト』が発売されたことにちなんで「ドラクエの日」としてさまざまなイベントが行われています。

 

  【動画】「ドラクエの日」に突如発表!カミュと妹マヤが主人公のスピンオフ『ドラクエトレジャーズ』最新トレーラー 

 

 35周年記念だった2021年の「ドラクエの日」では、ドラクエが『11』で終わるんだと勝手に思っていた私のマイナス思考を覆す最新作『ドラゴンクエスト12 選ばれし運命の炎』の制作発表、『11』のカミュを主人公としたモンスターズとは違う新たなスピンオフシリーズ『トレジャーズ』のムービーの公開、などなどそれはそれはドラクエファンの胸を躍らせるような情報がてんこ盛りでした。これから先毎日ドラクエでワクワクできるんだと思ったものです。

 

 しかし、あれから1年が経過しましたが『ドラクエ10』オフライン版も今夏に発売延期されたこともあり、あの日発表された新作の追加情報はまったくありませんでした(5月26日執筆時点)。

 これにはウズウズしているドラクエファンの方もいらっしゃるでしょう。

 きっとこの記事も「ドラクエの最新情報が!?」と開いた方もいらっしゃるかもしれません。本当に申し訳ありません。釣るつもりは全くありません。悲しみを分かち合いたかっただけなんです。

 ちょっとでいいから進捗を知りたい! 10年前の25周年のときは、Wii版の『ドラゴンクエスト1・2・3』がその年の9月に発売されていたのに、今年は1年何もありませんでした。どうしてなんだ!なにかあったのか!? とお思いの方も大勢いらっしゃるでしょう。

 そんな方の溜飲がこの記事で下がるとは到底思えませんが、少しでもドラクエ熱を保てるような話題をお届けしようと思います。

 ということで今回は、私ヤマグチクエストが『ドラクエ6』のアモスイベント、およびアモスを感じさせる『ドラクエ11』のイベントについて書かせていただきます。ドラクエの中でもかなり印象に残っているイベントです。

■アモスに真実を話した「優しいウソ」の存在を知ったあの日

 私はRPGにおいて、ウソをつかない実直で真面目な人間こそが勇者であるという考えがありました。

 

 なので、大学生になってとある方のゲーム実況動画で「いいえ」ループを見たとき、「ええ!? 断る人いるの!? 勇者なのに!?」と衝撃を受けました。そして同時に、「ええ!? “いいえ”って選んでも結局“はい”を選ぶまでループするの!?」と2度驚いたのをよく覚えています。

 そんな真面目さが勇者のあるべき姿だと信じて疑わなかった少年時代の私は、『ドラクエ6』のアモスイベントで悲しい事実を突きつけられます。

 アモスというのはモンストルの町を救うために魔物と戦ってくれた英雄ですが、魔物に尻を噛まれた後遺症で夜な夜な魔物に変身してしまうようになっていました。

 本人にその自覚はないのですが、町人はアモスへの恩義があるため言い出せず、毎日見て見ぬふりを決め込んでいたのでした。

 そんな中、旅路の途中でモンストルに立ち寄った主人公たちは宿屋の店主の制止も聞かずに一泊してしまい、魔物になって夜の町で暴れるアモスの姿を見つけてしまうのでした。

 それを見た主人公がアモスのもとに訪れると、「どうしたんですか? 私の顔に何かついていますか?」と聞かれた後、「アモスに真実を伝えるかどうか」という選択肢が現れます。

 ここでヤマグチ少年は、ウソをついてはいけない、勇者は隠しごとをしてはいけないという正義感にかられ、「わざわざ最初から“いいえ”にカーソルがあっている」にもかかわらず「はい」を押して、アモスに真実を伝えてしまいました。

 その後、アモスのため北の山にりせいのタネを取りに向かい、モンストルに帰りましたが、そこにアモスの姿はありませんでした。罪悪感からこの町にはいられないと悟ったアモスが町を去ってしまうのは、彼の性格を考えれば当然の選択だったでしょう。町人からも「なぜ伝えてしまったのか」と結構責められました。

 このとき、私は実直さだけが正義ではない。人の気持ちを想像することの大切さ。というのを痛いほど学びました。あそこで私はアモスに真実を伝えて正義感に酔っていたのでしょう。誰も救われないのに。

■『11』で再度問われた「真実とウソ」

 このアモスイベントを初めて見たのは小学生のころでしたが、今日にいたるまであのときの衝撃は忘れられません。

 

 そんな衝撃がずっと頭にこびりついている中、大人になってからプレイした『ドラクエ11』でまた同じような場面が現れました。そう、人魚ロミアと漁師キナイのお話です。

 

  ※  ※  ※

 人魚のロミアは人間の漁師キナイと結婚する約束をしていました。2人は固く愛を誓い合った仲だったのですが、キナイが迎えに来ないので心配だから様子を見てきてほしいとロミアに頼まれます。

 主人公はキナイが住むナギムナー村でキナイを探しますが、村では人魚を悪者のように扱っていました。人魚は人を騙して破滅させる恐ろしい存在だと。

 人魚の怖い伝説を聞きつつキナイを探しますが、実はロミアの愛した「キナイ・ユキ」はすでに亡くなっており、孫の「キナイ」は人魚とキナイ・ユキへの憎悪を口にしていました。人魚と人間では寿命が違いすぎること。そのことを失念していつまでも帰りを待っていたロミアにとって、キナイ・ユキの死はあまりにもつらい真実。

 主人公はロミアの待つ入り江に戻り、話しかけると、先ほどのアモスと同様に真実を告げるかどうかの選択肢が現れます。

 ここでの選択肢で私はアモスのときの気持ちをすぐに思い出しました。

「真実を告げることがすべてではない」。

 しかし、どうしてもロミアが不憫でなりませんでした。ウソをついて、「おお、キナイは元気だったよぉ~!」なんてどうしても言えませんでした。

 なによりこんなことになるなんて知らなかったので、当時セーブをしていませんでした。ここでリセットするようなことになれば、どこから再開になるのだろうか。

 悩んだ挙句、私は「はい」を押しました。

 その後の結末は、『ドラクエ11』でも屈指の名シーンですので、ご存じない方はここまで読んだうえでもぜひご自身の目でご確認ください。普通に泣いてしまいました。

 アモスイベントを通ってきたプレイヤーであれば誰しもがよぎったであろう、ウソの選択肢。

 アモスと違い、どちらを選んでもストーリー進行には特に影響はありませんが、あのイベントはわざとあのような仕様にしたんだろうと思います。『ドラクエ11』は行く先々でこれまでのシリーズ作品のBGMが出てくるなど、過去作からの流用が多数みられるので、おそらくこの人魚イベントもアモスのあの選択肢をオマージュしたのでしょう。

 だからこそ「これまでの集大成感」を感じて『ドラクエ11』でドラクエは終わるのだと考えていたのですが、見当違いでした。次作『ドラゴンクエスト12 選ばれし運命の炎』では主人公が「悪」らしいので、こういった「正義」を問うような選択肢も多く出てくることでしょう。

 一体、どんなストーリー展開になるのか。今から楽しみですね。

■あなたは真実を伝えましたか?

 ということで今回は、ドラクエの「正義」について考えさせられる「真実を伝えるか否かイベント」について紹介させていただきました。

 

 みなさんは当時どちらを選んだでしょうか。

 ちなみに『ドラクエ11』では、アモス同様に魔物になってしまって人を襲うようになった人物が出てきます。アモスを彷彿とさせるようなイベントが2つもあるのに、『6』ではモブの戦士グラフィックのおまけキャラ扱いなので、『6』以外の作品でアモスは全く出てきません。

 ほかのキャラクターは、モンスターズやらヒーローズやらで出番がたくさんあるのに……。

 ドラクエ36周年を迎えた今年、昨年発表された新作の情報が更新されることを祈りましょう。そして、もの好きな人は、アモスの再登場を祈りましょう。ちなみに私は、ここまで書いておきながらどうせ再登場してくれるならバーバラがいいです。

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