■弥勒の月 あさのあつこ作/長谷川俊介朗読
■オススメ度★★★★☆
時代や立場が自分に求める役割、あり方。そんなものに翻弄される、ありきたりだけれども苦しい、そんな悩みは、おそらくどの時代にもあるのでしょう。
それでも、生きていく中で、ささやかな温かい記憶が、ふと、自分を支えてくれることがあります。
けれども、その記憶の中の慕わしい存在が、狂気を抱えていたとしたら?
救いと、救われない哀しさが、少し切なくなる物語でした。
選択肢が多い現代。
指標がないからこそ迷う人も多いのではないかとおもいます。
選択肢がないからこそ、苦しいけれども、少ない選択肢の中で、前を向いて歩いていく、その姿に勇気づけられるかもしれませんよ?
川に身を投げたと思われる小間物屋の若女将。
自殺と思われたが、夫である小間物屋の主人は、自殺ではない、お調べ直しを…と訴える。
小間物屋の若い主人は、婿養子で、元は武家の出であること、そして、かなりの剣の使い手であることを、事件を担当した同心はつきとめる。
小間物屋の主人は、とある藩の家老を務める家の庶子の次男であった。
家老である父は、庶子の息子を政敵を始末する暗殺者として扱い、そして、父の暴走を止めようとする長男、兄を殺せ!と命じた。
兄を殺せず、父を殺し…そして、兄に全て忘れて、全て捨てて、生き直せと説得され、逃亡する。
逃亡先で、小間物屋家族と出会い、武士の身分と刀の腕と、武士であることをすべて捨てて、生き直すことを決意したのだった。
事件は、父の使っていた暗殺者が絡んだものだった。
事件を担当した同心は、死んだ父から受け継いだこのお役目に、飽いている様子だった。
事件の犯人は、小間物屋であると考えていたが、思いもよらぬ人物が、事件には関わっていた。