母の葬儀の後、新幹線に乗り→飛行機に乗り換え→離島到着後、お墓に納骨のスケジュールだった。
なかなかのタイムスケジュールで、少しでも乗り遅れたら全てが崩れるため、かなり急ぎめで慌ただしく動いた。
それも、スケジュールいっぱいのお寺にご無理を言って、なんとか都合をつけてもらった結果だったからだ。
私は家族全員で駆けつけていた。弟は独身。親戚の方も何名か来てくださったが高齢のため、葬儀のみでお別れをした。
私達家族は、新幹線→飛行機のチケットはスマホでとっていた。
しかし、弟はスマホでチケットを予約した事がなかったらしく。
チケットはまだとっていなかった。
そのためわたしが、すぐさま必要な新幹線のチケットを近くの駅の販売機でササッと購入して弟に手渡した。
飛行機のチケットは、予約サイトのアプリをメールで添付して送信し、弟自身にチケットを予約してもらった。
弟と私達家族の座席は近くを取れなかったが、同じ車両だったので時間のズレもなくスムーズに行動できた。
弟はスーツケースを持っていなかったようで、スーツ姿にリュックサックに、母の遺骨を大事に持つというスタイルだった。
博多駅に到着後、地下鉄に乗り換えて福岡空港にいくため、私達は
こっちよ、付いてきてね!
と後ろから付いてくる弟を時々見ながら先を歩いた。
その時だった、何やら両腕いっぱいに袋をかかえた外国人の女性が私の前を歩き去るのが見えた。
その変な装いの外国人の女性を目で追うと、後を付いてきている弟の方へと近づいている様子が見えた。
何か弟に話しかけようとしてるな!まぁ、弟もいいおじさんだ。軽く断って私の後に付いてきてくれるだろう。
と、確信し私達はズンズンとエスカレーターで地下に下り振り返った。
弟が
いなーーーーーいじゃーないかーー!
あと数分で地下鉄に乗らないと、飛行機ギリギリなのに、どこ行ったんや?
どこや?どこや?と、
またエスカレーターを上がっていった。
地上に出ても弟の姿はなかった。
おらん!おらん!おらんやないかーい。
弟に電話してもでやしない。母の遺骨持ったまんまどこいった?
弟は博多駅のことはよく知らないし、必死で探し回った。
すると、すーっと現れて
ねぇさーん。ねぇさーん。どこ行ったかとおもったよ。
と言われてカチンときた。
おーおー、こっちのセリフだよ。おめーこそ、何やっとたんじゃいと、言いたいのを我慢して、あんたこそ、どこ行っとたん?何でついてこなかったの?
と聞いた瞬間、弟の手にはビニール袋に入ったお菓子が持たれていた。
あなたもしかして、 あの外国人の女性から何か買ったの?
うん、僕のとこに来てさー、
『留学生でお金に困ってます。買って下さい。』って言われて、断っても断ってもしつこかったから買ったんよー。
で、幾らしたの?
ん?1000円
はーー?こんな急いでる時に、わざわざ立ち止まって、財布からお金出して買ったの?しかも、外国のよー分からんお菓子やんか?んなもん喰えるかぁー!
変な薬でも入ってたらどーすんのよ!ばーか!
でも、ぼくさー
何か良い事したと思うから、いい気分だよ。
ぼくダイエット中だから、ねえーさんにこの
お菓子あげるよ。
いらんって!
そんなくだらない正義感と共に、地下鉄に乗ると福岡空港に到着した。
荷物を預けあとは、検査のゲートをくぐるのみ。
さっきの事件は忘れて、ほっとした。この飛行機に乗れば納骨に間に合う。
安心感と疲れがどっと押し寄せていた。
そしてゲート前の入口でチケットを見せたとき、事件は起きた。
あ?すみません。この飛行機はさき程欠航になりました。視界不良で、、、
え?それって!
飛ばない?ってことですかねー?
はい!飛びません。
振り返った。さっきまで天候調査中と書いていた電光掲示板の文字が
欠航!
と表示していた。
他の飛行機は、普通に飛ぶ予定の中、離島行きの枠だけ、違う文字。
あんだけ急いでさー、ここまで来て、まさかの!飛ばない!
同じ飛行機に乗ろうとしていた方達も、座り込みスマホ片手に調べものをされていたり、『今日は野宿かなあ〜』と、半笑いになっている人もいた。
仕方ない、作戦を立て直そう。そう思って弟を見ると、オロオロし、
どぅしよーねえーさん
と動揺していた。
んーんー、まずトイレに行ってくるね
その間にお寺に説明して、予定を立て直してもらっといて。
こうなったら、仕方ない、落ち着いて作戦立て直そうね。
(カウンターに尋ねると、翌日の離島行きは、もうすでに全ての便が満席だった)
なんだか吹っ切れた感じでトイレに行き、頭ん中ぐるんぐるん考え巡らした。
まずは長女に博多港から離島行きの船が運航する予定か、チケットの空きがあるか、チケットは取れるかと調べてもらった。
それが駄目なら、朝イチの特急電車→フェリー→離島到着のルートでチケットをネット予約でとる。方法を夫に任せた。
次女はネット駄目!
一旦わたしの家に帰り作戦会議。
すると長女が博多港からのフェリーは『雑魚寝なら枠があるよ!』の嬉し知らせ。
23:50発だったかな。
しかし、『21時から販売開始やけん、早く行ったほうがいいよ。』
なあにー!急げ急げ!
スーツケースの中身をフェリー雑魚寝用にひたすら準備。
すると弟が、
ねえさん、トコジラミおらんといーねー
と余計な事言ってくる。
そんなもんおらん!おらん!
なんか腹立つー!
そして、博多駅で買った謎のお菓子をグーグル先生に調べてもらったらイタリアせいの普通のお菓子だと分かった。
大学生の長女に聞くと、留学生を装ってお菓子を売りつける詐欺がおるから気をつけるように聞いていたと、教えてくれた。
でも、長女はおじさんが良い事した!って満足してるんだから、詐欺だって伝えんほうがいーよ。なんか、可哀想やん。
と、なんと優しき長女
しかし、40歳も過ぎたオッサンが詐欺にかかるなんてこの先が心配だ!
ここは本人にもはっきり言って理解してもらわんと困る。
と、弟に言った。
あなたがさっき博多駅で会った留学生はおそらく詐欺よ、あなたは良い事したって、うぬぼれてるけど、詐欺やから!詐欺やから!分かった。
とはっきりと明確に伝えた。
服もリラックス出来る服に着替えた!
夜食も買い込みフェリー乗り場に無事到着した。
その時、
ねぇさん、なんかお母さんの骨壺がかカチャって音したよ。
なんかこぼれたかもしれん。心配だー!
と言ったかと思ったら、なんと、
周りの目も気にせず母の骨壺の中身をあけて確認してしまったのだ。
あっ大丈夫やった。骨こぼれてなかったよ。
もぉー、ヤバいヤツやんか!みんな見てるやんか!お母さん可哀想。
もう、疲れでどーでもよくなってきた。
フェリーの内装は綺麗だった。
みんな1枚100円の毛布を買って横になっていた。
私は持参した寝袋を広げて横になっていると、対向場所にいた若者達が
すげーなぁー、寝袋やんか!
と聞こえてきた。うるさい、うるさい。
弟は秒で寝てしまい。
私は寝れなかった。
船の中のマッサージチェアーでくつろいだり、ラーメン食べたり、シャワーコーナーに行ったりウロウロ。
そして離島に到着し、無事に母の納骨が終了した。
親戚のおばさんやおじさんがお墓の掃除に、お花等準備して待っていてくれた。
涙が出そうになった。
長い道のり色んなことがあったけど、父の隣に母を並べることができた。
母よ、ありがとう。