にのあいフィクションです。
※ご注意ください。つづきです。











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『今日、携帯気にしてません?』


涼真から言われてドキッとする。



病院の待合室みたいなソファーに
座りながら
スマホをいじってる俺の前に立ち
首を傾げながら見下ろしてくる。



俺は何食わぬ顔で、見上げて
『そう?』と返した。


涼真は…俺と相葉さんのことは
何も知らない…はず。


だけど…


なんだか気づいてる。


イケメンなのに優しくて
勘のいいオトコだよね。
背も高いし、器用だし。

言うことない。


でも俺たちの秘密は言わない。


言わないのは信用してないから
じゃなくて…
抱える事実が重過ぎるから。



『…あのしゅうまいって誰が
 食べるんですか?』


『え?俺じゃない?』


『だって今日22時までですよ?』



わかってるよ。
でも作りたかったんだもん。


俺だって
餃子だけのオトコ
じゃないんだから。


パズドラとかもそうだけど…


あんな風に同じ形で
キレイに羅列してる
無機物的なモノを見るのが好きで…


完全に、自己満足でもある。


しかも食べてくれる人がいるなら
そんなありがたいことはないよね。



さっきのスマホは相葉さん宛に
【先に食べていいからね。】

とLINEを打っていた。


相葉さんはそんなことはお見通しで
気を遣って待ってるとかはしない。


かずは作ることが目的だもんね。
って笑って食べてくれる。


だから、餃子だって基本は
相葉さんが地方のロケで
戻ってくる日とか…


そういう日を狙って作ってる。


喜んで食べてる姿が見たいだけ。



俺の願い叶えてくれる人は…

不本意だけど日野さんと
ハイボールを飲みながら
しゅうまいを摘んでる写真を
送ってくれた。




『あ、にやにやしてる。』

『うるさいなぁ。』



そんな会話の途中でスタッフから
呼ばれて、またオペ室に入った。






収録が終わって家に帰ったのは
…0時を回る手前だった。



家に入るとリビングの電気が
点いてたから
まだ起きてる?と思ったけど
その割には静かだったから


小さな声で『ただいま』と言いながら
ドアを開けた。



相葉さんだけがソファーに
横たわってた。


待ってなくていいのに。
明日も早いんだから、ベッドで
寝てて良かったのに。




それでも今日からは『いない』って
思ってた人が
そこにいる存在感は

俺の心を軽くする。




本当はね。ハワイだって
沖縄だって一緒に行きたいんだよ。


海に行きたいわけじゃないけど…



なんにもしないで相葉さんの
別荘のベッドでゆっくり寝てたいのよ。
俺だって。



でもそのタイミングは今じゃない。
って思ってる。



いつかね。
俺らが納得できるまで…


ファンのみんなを喜ばせた後に
そういう世界が待ってるんだと思う。



すやすや寝息を立ててる
相葉さんの顔をじっと見つめて


ちょっと満足してから


風呂に入ろうと立ち上がった。



『ん?かず?…』


立ち上がった時にTシャツが揺れて
俺の気配に気づき
目を覚ます、相葉さん。


『あ、ごめん。起こしちゃった。』


『えー。起こしてよ。
 何のために帰ってきたのよ。』


身体を起こしてソファーに腰掛け
そのまま俺の腕を引っ張り
膝の上に座らせる。

後ろからぎゅっと抱きしめられる
から…『もう、なに〜?』とか
嬉しいくせに、ちょっと抵抗した。


『…日野さんがいるから…』


『もうぐっすり寝てるよ。』


耳元で囁かれるから、変な気分に
なって相葉さんの腕を解こうと
するけど…ぜんぜん緩めてくれない。


それどころからTシャツの裾から
ゴツゴツした手が侵入してくる。


『ダ、ダメだよ。起きちゃうから…
 それに俺、オペでいっぱい
 汗かいてるから。』


『大丈夫だよ。起きないよ。』


『ちょ、まーくん。やめて。』

『ちょっとだけ。』
指先が突起に触れた……


『ん…アンっ!』

思ったより大きい声が出てしまって
口元を押さえた。



廊下からガタンと音がしたから
慌てて相葉さんの膝から立ち上がる。


『…やべ。起きたかな?』

『もう!何やってんだよぉー。』


ペチリと頭をはたいて
相葉さんから離れたけど…


リビングに入ってくる様子はなくて
少しだけホッとした。



『美味しかったよ。しゅうまい。
 ありがとう。』


優しい顔で微笑まれるから
照れくさくて逃げるように
風呂場に向かった…


でも、まだ見られてる気がして
振り返る。
案の定、同じ顔したまま
俺のことを見ていた。


『…まーくん。もう寝なよ。
 また帰ってきたらお土産話
 聞かせてよ。』


『じゃあ、最後にチューしよ?』


『……それも帰ってきてから!』

今度は振り返らずに
風呂場に向かった。


なんで今日に限って盛ったんだろう?


…人がいるから?か?






結局次の日はすれ違いで
日野さんとは会話できず


後日、LINEが届いた。



【二宮餃子も美味しかったけど
 二宮しゅうまいもなかなかでした。】


【…それは良かったです。】


【まぁのために作ってるんでしょ?
 いつも…】


【違います。俺が好きなんで。】

【まぁのこと?】



なんだよ。この人。
マジでいつもいつも。
俺のこと揶揄うんだから。



無視してたら、続けて送られて来た。



【ちょっと声…大きかったみたいです。】


顔から火が出るかと思うくらい
熱くなって頬を押さえた。


周りに誰も居なくて良かった……
今日は涼真は撮休だから。



なんなんだよー!
マジでぇ!!!


もう、あの人はウチに泊まるの禁止。




戻ってきたら相葉さんに
1番に伝えようと思う。










終わり
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