映画「おいしい給食」 | ペコリーナのブログ

 映画「おいしい給食 Road To イカメシ」を観てきました!


 テレビドラマでSeason3まで放送され、その節々で映画になっており、今回は昨年放送されたSeason3の締めとなる映画です。


 舞台となる時代は昭和。

 中学の数学教師である甘利田先生は、ハンサムだけれど厳しく、生徒のみならず周囲の教師たちとも打ち解けない堅物。

 しかし、実は大の給食好きで、毎日献立表をチェックしてはそのメニューに想いを馳せています。

 給食の時間、彼は心の中だけで饒舌となり、うっきうきで提供された食事を楽しむのです。

 しかし、クラスにひとり、同じく給食大好きな男子生徒がおり、彼は甘利田先生の想像を絶するアレンジで同じメニューを味わい尽くします。

 大人として、教師として、自らの給食好きを周囲に知られないためにもそんな自由な食べ方ができない甘利田先生は、男子生徒を羨ましく、そして苦々しく感じているものの、彼の自由な発想から目が離せません。


 そして毎回、「負けた……」と肩を落とすのです。


 しかしながら、甘利田先生の給食好きは周囲の殆どの人間は察していて、それぞれの立場から見守っているのでした。

 同僚の先生たち、校長、給食室のおばさん、そして件の男子生徒はもちろん、クラスの生徒みんなが、決して厳しいだけの指導ではない甘利田先生が、給食時間だけ常軌を逸したはしゃぎっぷりに気付いていることを、甘利田先生だけが気付いていないのでした。


 食事は健康はつながる大切な行為であり、そのためには歯磨きをきちんとする。

 勉強に集中するにはよく噛んで食事をすること。それによって脳が活性化される。

 好き嫌いはあっても良い、何より楽しんで食べること。


 といった彼の主張は、ただの給食好きの一匹狼な教師の独りよがりではなく、生徒を健全な思考へ導いているものだからです。


 とはいえドラマそのものは、殆ど甘利田先生の心の独り言で構成され、ノリノリの食事に満たされたのち、件の男子生徒のアレンジにトリッキーなまでの驚き、憧憬、敗北感といった流れで終わります。

 なので基本的には給食という飯テロと、甘利田先生の緩急ハンパない言動を楽しむ30分ドラマでありながら、合間あいまにさし込まれるエピソードに、彼の信条に同調できない大人たちの思惑、それに反抗する甘利田先生の言動などによって、この一連の物語にヒューマンドラマかのような深みを持たせるのです。


 全くのコメディでありながら、肝心なところでは観る者の心を震わせて涙すら流させるという、このドラマそのものがトリッキーな作品なのです。


 中央公論文庫から小説も出版されていて、この辺の仕組みはよく分からないのですが、どうもドラマ内容をそのままノベライズ! て感じではなく、紙吹みつ葉さんという作家が、恐らくドラマのキャスティングやエピソードをきちんと踏襲したかたちで、なおかつ映像だけでは伝わりきらないコミカルな表現で文章に落し込んでいます。

 これがまためちゃくちゃ面白く、小説だけでもちゃんと楽しめるのですが、ドラマや映画と並行して鑑賞すると更に面白さが増すという、これまたトリッキーな状況でして。


 小説を読んだだけでも笑って感動するけれど、それを映像で可視化されると、内容は同じでも演者の表情や台詞に込められた感情が別角度から胸をうち、新たな感動を与えてくれます。


 もっともっと熱く語れるのですが、そもそもこのドラマを勧めてくれた友人ですら少し引くくらい夢中になってしまったわたしには、ここで容易に語りつくせるほどの語彙力を持ち合わせておりません。


 まぁとにかく、甘利田先生を演じた市原隼人さんのポテンシャルの高さにまず感動するのですよ。

 だってだって、あの市原隼人さんですよ?

 野球ドラマの伝説「ROOKIES」が有名ですが。

 個人的には、


「極道大戦争」という三池崇史監督が好き放題した謎の映画の主演をしっかりきっちり演じきって観るものの全ての感情を持って行った市原隼人さん、


 「ヤクザと家族」で主演の綾野剛さん演じる義理人情ヤクザを慕いながらも、時代の流れに押し潰されていく弟分を演じた市原隼人さん、


 「風間教場」のドラマシリーズで、厳しい警察学校をリタイアした過去を持つ男を演じ、そのリタイア理由が「スタミナ不足」だったことが、視聴者の殆どがにわかには信じられなかったムッキムキボディの市原隼人さんが、


 むっちゃくちゃ男前の表情と声をコミカルに使い分け、ウッキウキで食事をする様とトリッキーな動き、そして敗北を噛みしめながら佇む姿勢がもはや武士。

 傍若無人な振る舞いにも関わらず、指導される生徒たちから信頼されていて、大人としての孤立を受け入れつつも「好きなものは好き」を貫く給食ライバルの生徒からの学びも糧にする先生を演じるなんて。

 なんて素敵なキャスティングでしょう。


 それは、市原隼人さん以外のキャストにもいえることで、本当に、そのキャラクターにぴったりの演者ばかりで、作品の全てにおいて愛情と熱情が感じられる作品でした。


 猛烈にお腹が空く作品でもあるので、たくさん食べてからじゃないと劇場でお腹が鳴ることだけが注意点です。


 友人と、揃って「お腹空いた〜!」となった鑑賞後、生パスタのお店でシソとエビと明太子のカルボナーラを食べました!

 うんまい。

 今回のみならず、全ての作品が最高に素晴らしい「おいしい給食」、全力でオススメです!

 この前日には韓国とアメリカの合作映画「パスト ライブス」
 そのまえは石原さとみさん主演の「Missing」
 さらにそのまえは「変な家」

 を鑑賞したので、昨年の映画鑑賞本数、13本に達しました。このままいけば、今年目標の20本鑑賞を達成できそうです。
 とはいえ本数は関係なく、いかに観たい映画が観たいタイミングで観られるか、が大切だと思いました。

 次はマッド・マックスの例のやつを観る予定でっす!