6月の逮捕劇の後



さすがに
新たな潜入までは
かなり間を置かないと危険だろう
ということで
大野さんは
僕と一緒に内勤に就いている。

訂正。
僕らと。



とは言え
長く続いた作戦の後始末、
報告書を作成するだの
現場の経験を
他の捜査官と共有するだのと
僕とは違うお仕事がいっぱいあるので、
日々
オフィスで一緒になる、とまでは
いかなかった。



それでも
東京都内の厚生省のなかで
素顔の大野さんに会えるのは
幸せでしかない。
周りの先輩達も
そんな僕をからかったりせずに
良かったな、と言って
にこにこしてくれる。








そして
秋も深まりつつある今日。
入省前に薦めてもらってから通ってる
護身術、
合気道の道場に
大野さんが一緒に来てくれた。



潜入捜査のために
大野さんは
様々な武術、体術を身に付けている。
そのなかでも
合気道は
『性に合ってるんだよなぁ』と
話してくれるくらい
お稽古自体も好きなんだって。



はじめてから2年にも満たない僕は
とにかく
捕まえられた時に
どうやって逃げるのか、を
重点的に教えてもらってきた。

非力ではあるけど
運動神経はイイな、と
師範がほめてくださる。
そこで
『受け身の練習もしてみるか?
掴まれて逃げられなくて
投げられることも想定しておこう』
と一気に難易度を上げられてしまった
タイミングだった。



合気道の受け身は
柔道とはまるで違い、
上級者になると
シルク・ドゥ・ソレイユですか?
忍者ですか?
と言いたくなるほど
重さが消えたように
身体が宙に舞う。
しかも
頭を軸にクルンと側宙し
足で着地して
直ぐさま次の構えに入ったりできる。

受け身と言うよりも
僕には
受け流し、に思える。



受け身を練習するか?
と言われた時は
断りたくなった…
けども
捜査官の端くれ。
自分が捕まらない
人質にならないことは
当たり前に重要なこと。
やるしかない……。



ここ2ヶ月
まずは
これまで身体のどこかを拘束されたら
こう逃げる、
段階ひとつで終わっていたところを
さらに追われて掴まれたら、
腕や肩から
やがて
身体を回転させて受け流す動きを
繰り返し指導していただいている。

まだ
宙に浮いてはいない。



それが



大野さんが
久しぶりに道場に来たので
師範も大喜びで
2人で試技を繰り返し見せてくれる。



どちらも
技をかける姿勢も美しく
受け身で宙に舞う姿勢も
驚くほど美しい。
アクション映画でこんな殺陣をつけたら
嘘だろっ!!と
リアルじゃない扱いをされかねない。



上機嫌の師範が
僕にも大野さんに投げられてみろ、と
言い出した。
『力を抜けば大丈夫!』
『とりあえず、一回側転してみて』



逆らえるはずもなく
側転する。
『おお、やっぱりな。
大丈夫、大丈夫』
『大野。教えてやって』
と丸投げして
顧問をされてる大学の道場へ
お出かけしてしまった。







つづく

ちなんだ時刻にアップしたいと思いつつ
23:26だと夜すぎますので
1日
間があきましたが
11:26に投稿することにいたしました。
計画性無し子…無しオバはんで
スミマセン(;´д`)>