その場にいる誰もが
堤防のへりギリギリに寄って
沈んでいく大野さんを見ていた。
密閉しているとは言え、
所詮は袋。
接着の甘い部分から
少しずつ空気が漏れて
泡がのぼってくる。
透き通った海水が
その泡と
のたうち始めた大野さんの動きで
舞い上がる水底の砂とで
徐々に濁り始めた。
そして
袋の中も
大野さんの手首から流れ出した血液で
濁っていた。
『撮影してるんですね』
やっと気付いたように
中村が聞いた。
中村達3人を乗せた車のドライバーが
加藤さんの横で膝を付きながら
撮影を続けていた。
『私のボスに見てもらおうと思いましてね』
『大野さんはボスのお気に入りですから。
最後を確認してもらって、
時代が変わることを
覚悟してもらうつもりですよ』
またしても
爽やかに笑う加藤さん。
『ほら!
やっとです!
あんなに藻掻いてる!』
ずんずん濁る海水。
見えなくなる
赤く染まった袋の中の大野さん。
でも、
水の動きで
激しくのたうち回っていることは
察せられる。
魅入られたように
言葉も無くして
ただ見つめている3人。
そこへ
車の近付く音がした。