いつもの診察。

いつものストレスチェック。


先生がいつもより優しい表情で話をはじめた。

「やっと、話ができるまで戻ってきたねー。僕たちは、頑張ってくれると信じてましたよ!」


去年の今頃はまだまだ暗闇の中にいて。

私はリビングの食卓テーブルの椅子に座って1日を過ごしていた。


繋がらない命の電話。

心ない友人からの言葉にさらに深く傷ついて膝を抱えていた日々。


笑う事を忘れ、色のない世界の隅っこでぽつんと座っていた。

私はいつ死んでもおかしくなかった。



一年という時間は、私の色々なものを変えた。


TikTokの配信で懐かしい場所に出会い、そこに行って死にたいと願った。

その配信ではやがて、文字で挨拶を交わす人と繋がった。


配信で見る景色は、死にたい場所から行きたい場所に変わっていた。


電車には乗れないけど、ライブにも時々行けるようになった。

ひとりぼっちの参戦だけど、薬を飲みながら。


ものすごい人数のリリースイベントにも行けた。一緒に並んでくれた方のお陰で、私は薬を飲むことなくイベントを終えた。


「本当に人との出会いに恵まれてると感じました。文字だけのやり取りでも、気がつくと声を出して笑っていたりします」


私は医師にそう告げる。


「もともと、人と接するのが上手だからね」


嬉しい言葉までもらった。



犯罪者とその家族への憎しみは忘れないし、消えないし、消さない!


けれど、私は生きる道を探して、今ゆっくりと前に進もうとしている。


体が…心が…。


苦しい時にできてしまったであろう、眉間の深いシワも。

笑う事を忘れて弛んでしまったほっぺも。

大きく開ける事を忘れた口を開けると、顎がかくっと音がしても。


行ける推し活には行く。

だらだらしたければする。

今の私を存分に甘やかしながら、光を探していこう。


冷たくなった潮風を浴びにいこう。

静かなお寺に出かけて、手を合わせよう。


このままでは終われない。

娘の為にも、母親の為にも。


推しの笑顔にパワーを貰いながら、ゆっくりと明るい場所を探していこう。


たった一年。

されど一年。


人は強いようでとても脆く、脆いようでとても強い。