事変
試行錯誤を繰り返し、ようやく納得の行くデッキを作り上げるのに、二日間を要した。
問題となった箇所は、合板を三枚並べた時に安定感が足りないという事。
この対処法として、オレが提案したのは、塩ビパイプをチーズとエルボーで組んだ格子状の枠の上に、合板を乗せるという方法。
早速、材料を仕入れようと懲りずにやってきた最寄りのホームセンター。
いつきてもガラガラだ。
店内を物色していると、、
いつの間にか、
ガラガラどころか、オレたち二人以外誰も居ない事に気づく。
入り口を見ると、自動ドアこそ開いているものの、屋外売り場の廻りをぐるりと囲む門扉が閉じられている。
やられた…。
ホームセンター内で、一泊。
ペット売り場の金魚でバーベキューなんて、まっぴらゴメンだ。
弛んだ体に鞭を入れ、何とか無事に、塀を乗り越え脱出成功。
これくらい、これから繰り出す大航海で待ち受けるであろう困難に比べたら、何て事はない。
結局、問題の箇所は、
合板の下にヤスリで角を取ったコンパネを対角線に敷くという方法に落ち着いた。
しかし、トラブルとは続くものである。
シーホーク号の心臓部分、
当初、タカのアルミボートで使用しているフットコントローラーのモーター(通称フットコン)を使う予定だったのだが、
構造上、フットコンを使用するのが難しい為、
急遽、ハンドコントローラー式のモーター(通称ハンドコン)を購入し、合わせて、専用のモーターマウント(取り付け台)も購入する事になった。
ほぼ三日おきに上州屋に上納金《上、州屋に納、めるお金、で上納金。》を払っている身としては手痛い出費だが、これも全ては、「爆釣」の二文字の為と自分に言い聞かせる。
モーターの出力は40ポンド。
説明書には、12V、60A以上の船舶用バッテリーをご使用下さい。と書いてある。
12V60Aのバッテリーね~。カーバッテリーで余裕じゃーん。
タカ充電しといてね~
あいよ~
な~んて、話していると、
不意にあっ君が、こんな事を言い出しやがった。
「マリン用とかメーテナンスフリーっていう、バッテリー液出ないヤツじゃないとダメよ」
薄々感づいてはいたよ。
だって、説明書に、「船舶用」って書いてあるもんね。
そうだよね。
平成二十七年夏、
これが世に言う、バッテリー事変勃発の瞬間である。
つづく