9月30日
病院にはワイハイがない。
スマホを命の綱にしている娘にとって、これが最大の危機だ。
月末に近づくと、契約データ量に到達して、ネットは見られない状況になる。
Twitterやネットの動画を見られないのは、娘にとっては「死ぬ」ことを意味するらしい。まして病院の孤独な生活を考えると、親バカかもしれないが、これはやっぱり酷だ。
1000円を支払い、1GBを追加した。
残念ながら、この1GBは一晩で消えた。
娘の病室にいると、3時のおやつだろうか。
あったかい、美味しそうな空気がカーテン越えに流れてきた。
食事の度に流れこむこの恐ろしい誘惑に、娘は徹底的に打ちのめされた。
娘は絶食中である。点滴でステロイドを大腸に流し込んで効果を見るらしい。
もう1本の点滴で栄養を流し込んでいるのだからそれほど空腹感はないはずなのだが…。
「お父さん、この料理つくって…。ああ、食べたい。」
明太子高菜チャーハン、ササミの明太子焼き…ネットのレシピを見ながら、鼻の下を長くしてウフフフ…とにやついている。
一晩、ネットのレシピをひたすら見ていたらしい。
10月1日 夜
幸せ過ぎて 死にそうだ