○ アダンの画帖  田中一村 伝 3/31日読了  南日本新聞社 中野惇夫 著

 

 

このヒマラヤの山奥キャンジンゴンパで読み切った。久しぶりに感動した。

こういう芸術家こそが真の画家であろう。絵を描く為に自分は生まれてきたと言い

きる。その為には一切の妥協を許さない。対象に対してどう自分が向き合い、その

本質を画絹の上に現していくのか、それを徹底的に突き詰めていく。

私は田中一村を日曜美術館で見た記憶(1984年、昭和59年 NHK教育)がある。

そして京都の大丸ミュージアムでも展覧会(2008年)があり行った覚えがある。

そして去年、滋賀県の佐川美術館で再び田中一村展(2018年 生誕110周年)があ

り行った。奄美にある一村の美術館にも行ってみたい。そしてヤフオクでは「奄美の

鸚鵡」を描いている絵を買ってしまった。この絵の真贋は判らぬがいい物はいい。

それ以上は詮索しない。(その後「軍鶏」(真作)、「風景」も手に入れた)

そして昨年は同じ様に日曜美術館でもう番組の後半になっていたかもしれないが、

無名の画家「不染 鉄」の特集をやっていた。私は一目見てその強烈に放たれ

た個性に心をわしずかみにされてしまった。しかもその後調べていくと、京都の星野

画廊で個展をやっていて、そこに引き付けられる様に次の日に行った。そこには 不

染 鉄の「富嶽」が正面に飾ってあった。私は即決で決めた。偶然が偶然を呼び、不

思議な縁があって私の所へ来たのだと思わざるを得なかった。

 

                                                同じ内容で改題したもの

                       不染 鉄の「富嶽」

 

〇 きりひと讃歌    手塚治虫     4/26読了

 

去年から手塚治虫の漫画を読み直している。Kindle版をタブレットで読んでいる。

先ずは「火の鳥」を全巻読み通した。中にはunlimitedと言って無料の物もある。

シュマリに続いて今回はきりひと賛歌を読んだ。面白かった。

主人公は小山内桐人、モンモウ病の研究を竜が浦教授の下でやっているT大の医局員、同僚に

占部と言う男がいる。それに関わかかわる女性達は、多津、麗華、モンモウ病のヘレ

いずみ。その他、いずみの父吉永。台湾人の万大人、ドイツ人の医学博士マンハイム教授

など。手塚のストーリー展開は早い。読み始めたらどんどん引き込まれて行き、先へ先へと

読まざるを得ない。その展開の中で人もどんどん死んでいく。

これもそうだが、「アドルフに告ぐ」なども映画化してほしいとつくづく思う。それ

がかなわなないのなら、この漫画のコマに音声だけでもかぶせて流してみるだけでも

充分面白いと思うのだが、どうだろうか。

       

 

〇 太陽のかけら ピオドレール・クライマー谷口けいの青春の輝き

                               大石明弘 著   

書いたのは谷口けいの山の友人である大石明弘である。大石明弘、渾身の作である。谷口の子供の時からの友人から丹念に話を拾い上げてゆく。そして谷口がどういうきっかけで自分の殻を打ち破っていくのかを、丁寧に探っていく。日記やメモからけいの本音が浮かび上ってくる。自然(山)と向き合い自分の全てをぶつけ、次々と快挙を打ち立てていく。その結果、女性初のピオドレール賞をも受賞する。そして山に全面的に受け入れられたかに見えたが、自然(山)は全く無慈悲にどこに落とし穴があるのかを教えてはくれない。最後は日本の大雪山で、ちょっと所用をしに行き、雪庇を踏み抜いてあっけなく滑落死してしまう。もし生きていれば、けいはさらにどんな自己表現をしていったのだろうか?けなげに生きたけいの姿に心打たれる。女性初の植村直己賞を断った「我、未だ旅の途中である。」のコメントに対しては、私はすんなりと受け入れられた。